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[読みたい論文] ベンゾチオフェン: オキシドになるもならぬも「量」次第

Viewed: 08:40:39 in July 17, 2025

Posted: April 24, 2020

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

Keywords: thionyl chloride; benzothiophene; DIBALH; Miura, Katsukiyo; 有機化学; ブログ

Diisobutylaluminum Hydride Promoted Selectivity-Switchable Synthesis of Benzothiophene Oxides and Benzothiophenes via an Al–Li-Dimetalated Intermediate (Uchida, Seiya; Kinoshita, Hidenori; Miura, Katsukiyo)
Org. Lett. 2020, 22 (8), 3123−3127. 


臭素原子とシリルエチニル基が結合したアレーンからのベンゾチオフェン化合物の合成に関する論文のようです。

本文読まずに勝手に中間体を想像してしまいました。まずはアルキンとジイソブチルアルミニウムヒドリドの反応でアルケニルアルミニウム種ができて、さらにブチルリチウムを反応させて臭素をリチウムに交換する、と。んで、塩化チオニルと反応させてベンゾチオフェン-S-オキシドに、さらに反応してベンゾチオフェンに、かな。間違ってたらごめんなさい。

アルキン部分の片方がシリル基なのはなんとなくわかる気がします。官能基変換に利用できるのと、これじゃないと反応がうまく進まないのと。tert-ブチル基の場合どうなるかですね。


過剰量の塩化チオニルが使われるとどのようになってベンゾチオフェン-S-オキシドの酸素原子が除かれるのか、ここが気になったので読みたい論文に追加しました。この時の塩化チオニルの成れの果てはどんな姿なのでしょうね。

ところでこの反応に使用されているジイソブチルアルミニウムヒドリド、他の有機アルミニウム化合物に比べれば危険性は低いのですが、大学院生の頃初めて使用する際に、溶液の入ったボトルをうっかりオープンにしてしまい、滝汗が。

この記事を書くために作成したChemDrawファイル(.cdxml)をダウンロードできます。
ご自由にお使いください。

 

有機化学初心者向けコメント

☆アルキン (alkyne)

炭素-炭素三重結合を分子内に1個持つ炭化水素。
CnH2n–2
分子中に炭素-炭素三重結合があればアルキンと呼ぶ場合も。

 

 

計算終わりました

 

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