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[読みたい論文] トリフルオロメチル基を自由にできる特別な反応剤

Viewed: 12:56:09 in June 21, 2025

Posted: June 3, 2021

Keywords: trifluoromethylation; OTf; thianthrene; DCM; Ritter, Tobias; 有機化学; ブログ

Trifluoromethyl Thianthrenium Triflate: A Readily Available Trifluoromethylating Reagent with Formal CF3+, CF3, and CF3 Reactivity (Jia, Hao; Häring, Andreas P.; Berger, Florian; Zhang, Li; Ritter, Tobias)
J. Am. Chem. Soc. 2021, 143 (20), 7623−7628.
URL (Doi): 10.1021/jacs.1c02606

 


トリフルオロメチル化剤に関する論文のようです。

論文で取り扱われるトリフルオロメチル化剤、トリフルオロメチル基をカチオンとしてもラジカルとしてもアニオンとしても使えるというのだから驚きです。

どんなのかというと、チアントレンの硫黄原子にトリフルオロメチル基がくっついたカチオンとトリフルオロメタンスルホン酸アニオンのペア。その合成法はシンプルで、チアトレンとトリフルオロメタンスルホン酸無水物からというもの。形式的には二酸化炭素が脱離。そのカチオン部分の(結晶内の)構造を本文中で見ることができますが、トリフルオロメチル基、どっち方向に出てるのでしょうね。アピカルっぽくあるようなないような。


そんなチアントレン骨格を含むトリフルオロメチル化剤、反応させる相手や添加する反応剤の組み合わせ次第で幅広い種類の化合物をトリフルオロメチル化できるとのこと。例えばケトンとの反応ではトリフルオロメチル基がカルボニル基とくっついたアルコールが生成。この場合はアニオンとして振る舞うというわけです。1,3–ジケトン化合物との反応では2–位にトリフルオロメチル基が「カチオンとして」結合、炭素-炭素二重結合に対してはラジカル的に付加、と。


反応の際に併せて添加している反応剤の誘惑、じゃなかった助けが大きいとは思いますが、ここまで挙動が違うのはすごいなあと、何がどうなったらそんあことができるのか詳しく知りたいので、後でじっくり本文を読みたいと思います。

素敵なラブリーチアントレン。♪ちょっぴり臭いのがたまらない…いや、臭くはないか、どうだったけな。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

計算終わりました

CAS-RN: 627-19-0
Chemical formula: C5H8
Molecular weight: 68.12
HOMO (eV): –6.908
LUMO (eV): +1.693
Dipole moment (D): 0.744136

 

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