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[読みたい論文] ホウ素アート化合物を作って求核剤を共役付加させて求電子剤をくっつけます

Viewed: 02:39:19 in July 6, 2025

Posted: July 27, 2021

Keywords: multicomponent reaction; lithium; electrophile; Bpin; conjugate addition; Fañanás-Mastral, Martín; 有機化学; ブログ

Stereoselective Synthesis of Highly Substituted 1,3-Dienes via “à la carte” Multifunctionalization of Borylated Dendralenes (Rivera-Chao, Eva; Fañanás-Mastral, Martín)
Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60 (31), 16922−16927.
URL (Doi): 10.1002/anie.202104741

 


ホウ素アート化合物の化学、多成分連結に関する論文のようです。

出発化合物は共役アルケニルボロン酸エステル。ここから様々な化合物と反応させていくわけですが、まずはフェニルリチウム。こいつと反応さえるとリチウムボレート、つまりホウ素アート化合物ができます。さらにこいつと有機リチウムを反応させると、有機リチウムの有機基が共役型の末端に付加してアリルリチウム種ができる、と。ここまでのスキームが下の通り。


この後2種類の求電子剤を反応させると最終の生成物となる。多成分、具体的には4成分を順序よく連結できるのが、この論文のセールスポイントなのでしょう。

このオープンアクセス論文をざっと読んでまず気になったのが、ホウ素アート化合物と有機リチウム(上のスキームのR3)の反応の位置選択性。ホウ素アート化合物のデンドラレン部分のどの炭素に有機リチウムの有機基が反応するのか、いくつか考えられる中で特定の箇所に限定されるその要因、これが何なのか、です。

共役形にアート構造のホウ素原子が結合している場合の炭素毎の電荷の偏りがどうなっているのかを考える必要があるのでしょう。著者さん達がこの「位置選択性」に対してどのようなコメントをしているのか、後でじっくり読んで確かめたいと思います。

求電子剤の反応に関しては本文中に詳しめの説明がされていそうです。そんな気がします。

デンドラレンば でてくるばってん
ぽりめられんけん でーってこんけん

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

計算終わりました

Chemical formula: C9H10N2
Molecular weight: 146.19
HOMO (eV): –5.866
LUMO (eV): –0.451
Dipole moment (D): 1.886538

 

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