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[読みたい論文] シリルエノールエーテルを「位置選択的に」作ります

Viewed: 02:25:01 in July 6, 2025

Posted: January 6, 2022

Keywords: silyl enol ether; TMSOTf; DIPEA; Vanderwal, Christopher D.; 有機化学; ブログ

Soft Enolization of 3-Substituted Cycloalkanones Exhibits Significantly Improved Regiocontrol vs Hard Enolization Conditions (Dwulet, Natalie C.; Ramella, Vincenzo; Vanderwal, Christopher D.)
Org. Lett. 2021, 23 (24), 9616−9619.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.1c03844

 


エノキシシランの選択的合成に関する論文のようです。シリルエノールエーテルといった方が馴染みがあるか。

August 11, 2021
[読みたい論文] 光触媒下での「実質」ケトンのアルキル化
環化付加かラジカル付加か。
Org. Lett. 2021, 23 (15), 5693−5697.

 

Spporting Informationが、「これ、Organic Synthesesでも意識しとるんか?」な印象。それはさておき、この論文、ケトンからシリルエノールエーテルができる反応で、二重結合の位置がどちらのものが優先的に生成するのか、というのが主旨の模様。

具体的には、β–位に置換基がある環状ケトンとトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルから生成するシリルエノールエーテルについて、置換基がある側のα–水素が引き抜かれるのか、それともない側なのか、です。結果としては「ない側」が優先して生成、しかもその選択性が別法の"hard enolization conditions"と比較して高い、と。

この論文の反応が"soft enolization conditions"であることはタイトルからわかりますが、soft/hardの違いが何なのかは、本文を読まないとはっきりしません。勝手に想像する限りは、hard云々の具体例としてはリチウムジイソプロピルアミドでケトンをリチウムエノラートにしてからクロロシランで処理するもの、soft云々だとトリエチルアミンとクロロシランとケトンを混ぜて反応、かと。繰り返しになりますが本文で要確認、です。ちなみにですが、α–位に置換基があるケトンの場合には、前者だと「ない側」のα–水素が引き抜かれ(速度論的支配)、後者だと「ある側」(熱力学的支配)。

そんなわけで、この反応が速度論的/熱力学的支配によるものかも確認したく、読みたい論文に追加です。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

計算終わりました

CAS-RN: 63-38-7
Chemical formula: C9H15N3O11P2
Molecular weight: 403.18
HOMO (eV): –6.421
LUMO (eV): –1.003
Dipole moment (D): 2.612262

読みたい論文シリーズ− 2022年1Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2022年1〜3月)。

2022年1Qの記事一覧
お仕事関係の記事のリストです(2022年1〜3月)。

 

January 5, 2022
[読みたい論文] 一酸化炭素を使う、触媒も添加剤も要らないα,β-不飽和カルボン酸アミド合成
混ぜて加熱。以上。
Org. Lett. 2021, 23 (24), 9505−9509.

December 28, 2021
[読みたい論文] アシルシラン由来のカルベンとジエンからシクロペンテノン骨格を作ります
Fischerカルベン懐かしい。
Org. Lett. 2021, 23 (24), 9490−9494.

December 27, 2021
[読みたい論文] カルボン酸エステルのα炭素にくっついているOH基を間接的にアリール基に変換します
チオカルバミン酸エステル経由。
Org. Lett. 2021, 23 (24), 9485−9435.

December 24, 2021
[読みたい論文] 炭素-水素結合と炭素-窒素結合をぶった切りながらインドール骨格とアセナフチレン骨格ができます
盛りだくさん反応。
Org. Lett. 2021, 23 (24), 9431−9435.

December 23, 2021
[読みたい論文] Rauhut–Currier反応: カルベン触媒を使ってキノロン骨格を作ります
エナンチオ選択的に。
Org. Lett. 2021, 23 (24), 9413−9418.

December 22, 2021
[読みたい論文] 嵩高いアリールボロン酸エステルをシンプルな触媒を使って作ります
反応温度も低め。
Org. Lett. 2021, 23 (24), 9649−9653.

December 21, 2021
[読みたい論文] 触媒は「近い」のにできる化合物は「遠い」分子内環化
完璧なのか混ざるのか。
Org. Lett. 2021, 23 (24), 9403−9407.

December 20, 2021
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[読みたい論文] トリチオ炭酸エステルが可逆的付加開裂連鎖移動重合に使えるぞ
AIBNから持ってきました。
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[読みたい論文] イリジウム触媒下でのアリルアリールエーテルのエナンチオ選択的な環化
クライゼン転位ではないです。
Chem. Commun. 2021, 57 (99), 13542−13545.

 

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