[化学系論文] JACSでの日本人シェアを調べました—平成編

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Posted: January 20, 2019

(2018年版の集計結果はこちら)

平成から新しい元号に変わる今年。

代表的な化学系雑誌J. Am. Chem. Soc.での、平成時代の日本人論文のシェアについて調べました。

 

まずは数字から

各年でのシェアと、その年の出来事をまとめました。

平成のスタートからシェアは上昇し、2000−2005年にかけてシェアのピークを迎え、その後下落しています。1990年代後半にCRESTなどの大型事業、ポスドク1万人計画による予算措置や人員の拡充が論文の量産に貢献したことが理由の一つとして挙げられるかもしれません。ジャーナルの電子化や論文作成・投稿の高効率化も良い影響を与えているようです。一方、21世紀初頭以降のシェア下落ですが、国立研究所や国立大学の法人化による雑務の増大や運営費交付金のカットの影響があるのかもしれません。もちろん他のデータとの突き合わせによるより詳細な考察は必要ではあります。

2018
8.7
ノーベル生理学・医学賞(免疫チェックポイント阻害因子)
2017
9.9
2016
10.8
理研と産総研、特定国立研究開発法人に指定
ノーベル生理学・医学賞(オートファジー)
2015
12.1
ノーベル物理学賞(ニュートリノ振動)
ノーベル生理学・医学賞(線虫治療法)
2014
11.7
ノーベル物理学賞(青色LED)
STAP細胞騒動
2013
12.5
2012
13.3
ノーベル生理学・医学賞(iPS細胞)
2011
14.4
東日本大震災による科研費支払い分割
2010
14.0
ノーベル化学賞(クロスカップリング)
2009
14.9
民主党政権下での事業仕分け
2008
14.6
リーマンショックに伴う予算措置
日経平均平成最安値
ノーベル化学賞(GFP)
ノーベル物理学賞(対称性の破れ)
2007
14.0
BNPパリバショック
グローバルCOEプログラム
2006
13.9
2005
14.9
ノーベル化学賞(メタセシス)
2004
15.0
国立大学法人化
2003
15.0
2002
15.5
ノーベル化学賞(質量分析法)
ノーベル物理学賞(ニュートリノ検出)
2001
15.5
国立研究所法人化
21世紀COEプログラム
ノーベル化学賞(不斉触媒)
アメリカ同時多発テロ
2000
15.5
ノーベル化学賞(導電性高分子)
1999
13.6
1998
13.4
ロシア財政危機
LTCM危機
J-STAGEスタート
アジ化ナトリウム事件
カレー事件
1997
10.9
アジア通貨危機
1996
10.8
ポスドク1万人計画
ノーベル化学賞(フラーレン)
1995
11.0
CRESTスタート(JST)
Applied Physics Letters Onlineスタート
地下鉄サリン事件
阪神淡路大震災
1994
12.0
ノーベル化学賞(カルボカチオン)
松本サリン事件
1993
11.0
1992
10.1
液体窒素酸欠事故
1991
10.3
大学院重点化
さきがけスタート(JST)
シランガス事故
タリウム事件
1990
11.5
1989
11.3
元号が平成に
日経平均平成最高値
 

 

JACSの論文数は?

集計をしているときに気になる傾向が見つかりました。

2005年以降、日本人著者の論文のシェアも下落しているのですが、JACSに掲載された論文数も減少しているのです。


とすると、シェアの上昇/低下の理由も、先に記述した政策云々の単純なものだけとは限らない、そんな気がしてきました。21世紀に入ってから学術雑誌が多種類刊行され、総合化学雑誌への掲載にふさわしい論文が相対的に少なくなったとか、Nature系など他の雑誌に人気が移ったとか、インパクトファクターや被引用数が云々とか、理由は色々頭に浮かびます。

もちろんこれまでに集めたデータだけで真相がわかる訳もありませんので、他の雑誌ではとか、サンプリングしている全雑誌ではどうかとか、多方面からシェアの変化を見ていきたいと思います。

この記事を書いた人
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

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[読みたい論文] イソプロピルアルコールでハロゲン化アリールを還元
触媒も塩基も不要。紫外光使います。
Chem. Commun. 2019, 55 (6), 767−770.

[読みたい論文] 有機セリウムで無触媒炭素−炭素結合形成
塩化セリウム/有機リチウムといえばImamoto reagentですよね。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (4), 1188−1192.

[読みたい論文] リン−ホウ素系6員環frustrated Lewis pair
この浮気者〜!。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (3), 882−886.

[今日描いた構造式] tris(2,6-difluorophenyl)borane
FLPでアミドを還元的に水素化。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (1), 159−162.

[今日描いた構造式] 3-(4-(trifluoromethyl)phenyl)pyridine
アリール−アリールカップリング。
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140 (51), 17851−17856.

[化学系論文] 日本人著者の論文のシェア 2018年版
2017年のデータと比較しました。

[今日描いた構造式] 2-phenyl-4,5,6,7-tetrahydro-1,3-oxazepine
開環重合のモノマー。
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140 (50), 17404−17408.

[研究室での事件] 結晶化の苦労を台無しにする輩
伝え聞いた話です。

[今日描いた構造式] ジシレン化合物
ケイ素−ケイ素二重結合、しかもケイ素原子は2価。
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140 (49), 16962−16966.

[化学系論文: 日本人著者の論文のシェア] 2017年版の集計が終わりました。
ツートップはもちろんあの雑誌。

[今日描いた構造式] N-(phenylthio)phthalimide
フェニルチオ源として不斉反応に。
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140 (46), 15621−15625.

[今日描いた構造式] benzo[de]chromene
1-ナフトールとアルキンから。
Chem. Commun. 2018, 54 (91), 12879−12882.

[今日描いた構造式] tris(trimethylsilyl)phosphine
tBu3Pとの構造の違いが気になります。

[今日描いた構造式] dinaphtho[2,3-d:2′,3′-d′]anthra[1,2-b:5,6-b′]dithiophene
合成から有機トランジスタ特性の評価まで。

[今日描いた構造式] 1H-phenalen-1-one
1-ナフトエ酸とアルキンから。

[今日描いた構造式] 8-aminoisocoumarin
イサト酸無水物とアルキンから。

[今日描いた構造式] hitoyopodin A
ベンゾビシクロ[3.2.1]オクタン骨格を持つ天然化合物。

[今日描いた構造式] P,P-dimethylformylphosphine
DMFの窒素原子がリン原子に置き換わった構造です。

[今日描いた構造式] allyltriethylsilane
Diels−Alder反応に使われていますが、基質としてではありません。

[今日描いた構造式] 9-(diethylamino)-5H-benzo[a]phenoxazin-5-one
蛍光色素。