[読みたい論文] 第4436回最強有機触媒決定戦

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Posted: February 4, 2019

[J. Org. Chem. 2019, 84 (3), 1126−1138] NMR Quantification of Hydrogen-Bond-Activating Effects for Organocatalysts including Boronic Acids (Diemoz, Kayla M.; Franz, Annaliese K.)

エントリーした(?)66種類の有機プロトン酸触媒になり得る化合物について、トリエチルホスフィンオキシドとの混合溶液状態での31P NMRのケミカルシフトの移動幅を調べた、というのがこの論文の核になる部分だと思います。

P=O結合を持つ有機リン化合物にはルイス塩基性やBrønsted塩基性があり、ルイス酸やBrønsted酸との親和性があります。溶液中でP=O結合を持つ有機リン化合物とルイス酸やBrønsted酸の間に相互作用が生じると、リン原子の電子密度が低くなり("引っ張られる"というやつ)、31P NMRのケミカルシフト値が低磁場側へ移動する(ppm値が高くなる)のです。そして、理屈の上では、ルイス酸性やBrønsted酸性がより強い化合物との相互作用によって、その移動幅が大きくなるわけです。


つまり、観測されるケミカルシフトの移動幅がより大きければ、そのルイス酸やBrønsted酸は、ルイス塩基との相互作用がより強く、有機反応での触媒活性がより高くなると推測することができるのです。

この論文では、フェノール、ジオール、シラノール、カルボン酸、ボロン酸、リン酸の中から66種類のプロトン酸性化合物について、トリエチルホスフィンオキシド(TEPO)の31P NMRのケミカルシフトの移動幅を測定しています。また、個々の化合物での移動幅と、Friedel−Crafts反応での触媒活性との相関を調べており、個々の化合物の酸解離定数(pKa)よりも相関性が高い模様。また、ボロン酸のホウ素原子はルイス酸としては機能しておらず、ボロン酸の水素原子が触媒の活性中心であることを明らかにしているようです。

なお、エントリーした66化合物中"最強"なのは、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸である模様。


色々詳細に検討されているようなので、読みたい論文に追加です。

なぜ"イヤッホーイ!"なのかは、TEPOの構造式から察してください。4436はこの記事の番号です。

Keywords: triethylphosphine oxide; 3,5-difluorophenylboronic acid

この記事を書いた人
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

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