[読みたい論文] 無駄のない1,3-ジケトンのアルキル化

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Posted: February 7, 2019

[Org. Lett. 2019, 21 (3), 741−744] Cationic Iridium Complex-Catalyzed Intermolecular Hydroalkylation of Unactivated Alkenes with 1,3-Diketones (Takeuchi, Ryo; Sagawa, Jun; Fujii, Masaki)

いい意味で、「頭をあまり使わなくても読めそうな論文」だと思います。Supporting Informationを見て、ちょっと感心というか、きっちりしているなぁと思いました。内容そのものもですが、特に文と文の間にスペースが2つ入っているところがです。

論文の内容は、イリジウム触媒存在下での1,3-ジカルボニル化合物とアルケンの反応。炭素−炭素結合形成反応ですね。Supporting Informationを見た限りは、1,3-ジカルボニル化合物は1,3-ジケトン限定のようです。反応式中のDCEは、1,2-ジクロロエタン、codは1,5-シクロオクタジエン。触媒と基質と溶媒だけの、シンプルな反応系です。


この反応では少なくとも上の3種類の化合物の生成が予想されます。破線の枠で囲ってある2種類の化合物と、囲っていない1種類が、位置異性体のペアです。出発のアルケンのどの炭素が1,3-ジカルボニル化合物の炭素と結合するかで、どちらの位置異性体になるかが決まります。この論文の反応では、破線の枠で囲ってある2種類が生成する模様です。囲っていない側のものが生成しているかどうかは論文本体を注意深く読まないとわからないようです。

そして、破線の枠で囲ってある2種類の化合物は、R3が水素原子の場合には同じ化合物なのですが、水素原子ではない場合、この論文の反応では両方生成するようです(収率は低くはならない模様)。反応後にこれら2種類の生成物は分離してはいないようです(多分難しい)し、生成物の比(ジアステレオマー比)も、Supporting Informationからはちょっとわかりません。13C NMRスペクトルを見ると、どちらが優先して生成しているかはわかりませんが。ざっくり3:1〜5:1くらい?

反応の位置選択性がどのように決まるのか、読みたい論文に追加です。カチオン機構ではなくて酸化的付加/挿入/還元的脱離の方?

あと、1,3-ジカルボニル化合物1分子とアルケン2分子が反応した生成物はできないの、何故なんでしょう。アルケンを1,3-ジカルボニル化合物に対して3倍モル量使っているのに、です。こういうの。混み合ってる?


Keywords: iridium; 1,5-cyclooctadiene; 1,2-dichloroethane; acacH; diastereomeric ratio; regioisomeric ratio

この記事を書いた人
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

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