[読みたい論文] 硫黄原子の立体配置が気になる分子内環化反応

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Posted: December 18, 2019

Efficient Synthesis of Cyclic Sulfoximines from N‐Propargylsulfinamides through Sulfur–Carbon Bond Formation (Aota, Yusuke; Maeda, Yoshiaki; Kano, Taichi; Maruoka, Keiji)
Chem. Eur. J. 2019, 25 (69), 15755−15758.

Keywords: KOH; PrOH; HPLC; 読みたい論文シリーズ; 有機化学; ブログ


水酸化カリウムにより促進される、N-プロパルギルスルフィン酸アミドの分子内環化に関する論文のようです。スルホン酸でもスルフェン酸でもなく、スルフィン酸、です。

Graphical Abstractをパッと見て、R3とR4が結合している炭素の立体が反応に影響を与えるのかと思いましたが、よくよく見ると硫黄原子とR1をつなぐ線、単純な直線ではなく、R3から出ているやつと同じなのですね(たぶんR4からのとは違う)。要旨テキストを読めばわかるのですけどね。というわけで、どうやら硫黄原子のキラリティが論文中で重要になるのではと思いました。

この論文で一番気になるのは反応の過程で硫黄中心の立体がどうなっていくのか、つまり硫黄について「立体保持」なのか「立体反転」なのか、です。それを確認するためには生成物の絶対配置を調べる必要があるわけですが、生成物のX線結晶解析で決めているのか、生成物を既知の化合物に変換して旋光度云々か、その辺りも知りたいところではあります。

反応機構については窒素原子に結合している酸性度のやや高い水素と水酸化カリウムが反応してアニオンになってから分子内環化とだいたい想像できそうです(これも要確認)。

反応の様相は要旨とSupporting Informationでつかめますが、正確なところを知りたいので、読みたい論文に追加です。

R2が水素原子、R3とR4のどちらが水素原子の場合、アルキンがアレンに異性化しそうなんだけど、実際のところどうなんでしょうね。

この記事を書いた人
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

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計算終わりました

 

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