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予め言っときますが、H4O「分子」じゃないですからね。
初期構造はこれ。
計算が進みにつれて…おや?
探索中の動画あります
右のこれはもしかして…H4O?
そこでこの右の構造だけを取り出し、もう一度鞍点探索。
計算はすぐに終了。構造は取り出したものとほぼ変わらず。
水分子に水素原子が2個くっついてるように見えますが、酸素(赤)と水素原子(白)の原子間距離の長い方(点線)は1.57Å。長すぎます。短い方は0.98Åで、水分子のものとあまり変わらず。
続いて振動解析。
虚の振動数がひとつだけ現れれば、遷移状態の可能性あり、です。
虚の振動数(マイナスのもの)は、ひとつだけですね。
ここまで得られたデータをもとにIRC解析。これも計算は短時間で終わり。データを見ると…おや?反応の出発点、これかいな。
H3Oと水素原子…計算ログを見ると、離れたところにある水素は、アニオンらしい。
つまり、このH4OはH3O+とH−の反応の遷移状態、ということか。
ちなみに、反応の出発点も反応の終着点も構造は同じで、H−の交換が起こってるだけ、と。
このH4Oの構造は期待してたものと違う…と結論付けようとしたが…
虚の振動数、現る。
しかもひとつ。
どんな振動をなのか、見てみると…
これ、H2OとH2になる方向じゃないですか。
つまり、
H2O + H2 ⇄ [H3O+ + H−]‡ ⇄ [H4O]‡
まぁ、「道はある」ということです。
ただし、「可能性はゼロではない」くらいしか言えませんからね。
んでは、どのくらいの可能性なの?
・[H3O+ + H−]‡は、H2O + H2より350.88 kJ/mol高い(= ギブスエネルギー的に不利)
・[H4O]‡は、H2O + H2より497.26 kJ/mol高い
となりました。
497.26 kJ/mol …
ありえないくらいでかすぎます。やばいくらい。
このくらいのエネルギー差があるものを口に入れると、多分ヤケドどころじゃすまないんじゃないかなぁ。
だって、化学的に安定な炭化水素の炭素-水素結合が切れてしまうレベルですから。
常温・常圧ではこのH4Oはまず存在し得ないというのが私の結論。
しかもこれ、分子じゃなくて遷移状態ですからね。まず安定に存在し得ない。
というわけで、H4Oの構造の探索は続きます…
…やる気があればね。
【おまけ】正四面体のH4Oをむりくり計算したら、H2O + H2より590.01 kJ/mol不利と出たぞ。エネルギー差がもっとでかかったw
正方形のはさらに不利で、エネルギー差は904.76 kJ/molに
どちらもありえん構造だと思います。