[s-cis/s-trans] アクロレインのどっちの構造が安定なのか計算しました。

Viewed: 08:50:54 in December 9, 2019

Posted: August 20, 2019

二重結合をもつ有機化合物にはシス(cis)体とトランス(trans)体の構造をとるものがあると言うのは、有機化学の教科書の割と始めのあたりに描かれたりするのですが、表題の画像のように、二重結合と二重結合の間にある単結合周りがどうなっているのかを議論するためのキーワードに、s-cisとかs-transとかいうのがあります。

簡単に説明すると、2つの二重結合に挟まれた単結合を基準に、2つの二重結合が同じ側にあるのがs-cisで、反対側にあるのがs-transです。s-cisとs-transはそれぞれcisoid, transoidとも呼ばれます。幾何異性ではなく、立体配座の話ですね。

さてそのs-cisとs-transですが、単純な分子構造をもつアクロレインの場合にどっちが安定なのかなと思い、まあ予想はつくのですが、とりあえず計算しました。

こっちがs-cisのアクロレイン。



んで、こっちs-transのやつ。



B3LYP/6-31G(d)、GAMESSを使っての計算です。

結果、s-transの方が6.6kJ/molより安定となりました。

ちなみにですが、振動解析から出たC=O伸縮振動の波数(cm−1, 未補正値)は、s-cisのが1806、s-transのが1802でs-cisが高く、C=C伸縮運動の端数がs-cisのが1687、s-transのが1703でs-transが高くなっています。C−C伸縮のところはs-cisのが941、s-transのが931でした。波数もですが強度も異なるには驚き。

この記事を書いた人
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

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