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[読みたい論文] アルキンのくっついたナフタレンとジボロンからボラフェナレンを作ります

Viewed: 01:17:52 in June 28, 2025

Posted: November 20, 2020

Keywords: B; N; phenalene; FG; circular polarized luminescence; polyaromatic hydrocarbon; Bpin; n-BuLi; Uchiyama, Masanobu; 有機化学; ブログ

Nucleophilic Diboration Strategy Targeting Diversified 1‐Boraphenarene Architectures (Hirano, Keiichi; Morimoto, Kensuke; Fujioka, Shota; Miyamoto, Kazunori; Muranaka, Atsuya; Uchiyama, Masanobu)
Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59 (48), 21448−21453.

 


ボラフェナレン合成に関する論文のようです。

ボラフェナレンといきなり書かれてもピンとこないかもしれません。フェナレンという3つの六角形がくっついた芳香族化合物があります。この化合物、一つの炭素だけメチレンで、こいつはπ共役に関わっていない(厳密には知らん)のです。で、このメチレン炭素がホウ素に置き換わったのがボラフェナレン。ホウ素原子の空の起動がπ共役にしっかりと関われるので色々と面白くなりそうな化合物である、と。


このボラフェナレン化合物をどう合成するか、これがこの論文のセールスポイントなのでしょう。アルキニル基とブロモ基が結合したナフタレンとジボロンから。ブロモ基をn–ブチルリチウムでリチオ化し、ジボロンと反応させるとGraphcial Abstractにあるような構造の中間体となり、ナフタレン骨格の炭素原子と結合していない「末端側」のホウ素原子がアルキニル基をアタックする、ということでしょうか。

試しにホウ素周りがBpinなやつを描いてみましたが、なかなかの混み具合ですね。


最終的にジボロンは無駄なくボラフェナレン骨格の一部かボラフェナレン骨格の置換基となり、官能基の導入や返還に利用できるようで、その例示が論文中にもありそうです。合成した各種化合物の光物性なども調べてそうで、その辺りも本文中で確認したいので、読みたい論文に追加です。R1がでっかい場合の軸不斉とかも。

Supporting InformationやGraphical Abtractに結合がぶっとく描かれてるのを見て、化合物のπ共役面が椀曲してると勘違いしてしまいました。平面でいいんですよね?

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

計算終わりました

 

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