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[読みたい論文] ミセルの中でケトンを不斉還元します

Viewed: 21:46:02 in June 25, 2025

Posted: May 13, 2021

Keywords: Cu; BIPHEP; PMHS; AS; ee; TPGS-750-M; Lipshutz, Bruce H.; 有機化学; ブログ

Copper-Catalyzed Asymmetric Reductions of Aryl/Heteroaryl Ketones under Mild Aqueous Micellar Conditions (Fialho, David M.; Etemadi-Davan, Elham; Langner, Olivia C.; Takale, Balaram S.; Gadakh, Amol; Sambasivam, Ganesh; Lipshutz, Bruce H.)
Org. Lett. 2021, 23 (9), 3282−3286.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.1c00746

 


ミセル内での不斉反応に関する論文のようです。取り扱われる反応は、ケトンのヒドリド還元。

キラル銅触媒が使用されています。醋酸銅と軸不斉リン配位子、そしてヒドロシランから調製されたもので、銅ヒドリド種が触媒サイクルをぐるぐる回ってケトンを還元するのでしょう。

ヒドロシランはポリシロキサンタイプのPHMS。高分子であることがどのように良い影響を与えているのかは本文で確認する必要がありますが、とにかくこいつが都合良い模様。安価であるというのもあるようで。

そこの論文のセールスポイントは、ミセル内の反応であること。温和な条件下で紺学純度の高い生成物が得られると要旨テキストにありますが、一般的な有機溶媒内での反応と比べてどうなのかが気になるところ。そのあたりを知りたいので、読みたい論文に追加しました。

ミセルを構成する両親媒性のTPGS-750-M分子の構造は下の通りで、nは大体15くらいとのこと。ポリエチレングリコールとコハク酸とビタミンEの骨格が見えますね。


この構造を採用した経緯についても知りたいところです。著者さんたちの講演を聞くのが早いか。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

計算終わりました

Chemical formula: C8H7NO2
Molecular weight: 149.15
HOMO (eV): –5.610
LUMO (eV): –0.451
Dipole moment (D): 2.415128

 

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