Archive|Nanoniele|MakiokaFufudo

 

[読みたい論文] 毒性のない非プロトン性極性溶媒、NBP

Viewed: 21:54:03 in June 25, 2025

Posted: October 14, 2021

Keywords: NBP; Fe; Mg; cross-coupling; carbon–carbon bond formation; NMP; THF; Kumada coupling; Bisz, Elwira; Szostak, Michal; 有機化学; ブログ

N-Butylpyrrolidone (NBP) as a non-toxic substitute for NMP in iron-catalyzed C(sp2)–C(sp3) cross-coupling of aryl chlorides (Bisz, Elwira; Koston, Martina; Szostak, Michal)
Green Chem. 2021, 23 (19), 7515−7521.
URL (Doi): 10.1039/D1GC02377B

 


掲載されている雑誌からお察しの通り、グリーンケミストリーに関する論文です。著者さんたちは「アミドのプロ」のようで、論文ごとに反応が異なるのですが、共通するのがアミドという…。

[読みたい論文] アミドの反応性をNMRで予測します
じれねじれてケミカルシフト
Chem. Commun. 2019, 55 (30), 4423−4426.

 

で、この論文で取り扱われている反応は鉄触媒下での塩化アリールとGrignard反応剤のクロスカップリング。熊田カップリングに近いか。

この反応では環状アミドを配位子として添加することが効果的。代表例が非プロトン性極性溶媒としても使われるN-メチルピロリドン(NMP)ではあるのですが、この化合物には生殖毒性があり、類似の構造で毒性のない(というか低い)ものを代替しようということで、N-ブチルピロリドン(NBP)が候補に挙がったということなのでしょう。

NMPとNBPに性能差、特に使用した際の収率の差がどれくらいのものなのかを知りたくて、読みたい論文に追加しました。

ところでN-メチルピロリドン、私も実験で使ったことがありました。当時よく使われていた非プロトン性極性溶媒はヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)なのですが、これには発がん性があり、代替として出てきていたものの一つがN-メチルピロリドンでした。他にはDMPUとかありましたね。

HMPAにまつわる事故例(?)は前にも書きました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

計算終わりました

CAS-RN: 780-69-8
Chemical formula: C12H20O3Si
Molecular weight: 240.37
HOMO (eV): –6.625
LUMO (eV): –0.258
Dipole moment (D): 0.952257

読みたい論文シリーズ− 2021年4Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2021年10〜12月)。

2021年4Qの記事一覧
お仕事関係の記事のリストです(2021年10〜12月)。

 

October 13, 2021
[読みたい論文] 二酸化炭素を使ってベンゼン環の「メタ位」にカルボキシル基を導入します
水素はどこから。
Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60 (43), 23349−23356.

October 12, 2021
[読みたい論文] アルコールとフェノールからカルボン酸フェニルエステルを作ります
水素アクセプター不要。
Org. Lett. 2021, 23 (19), 7683−7687.

October 11, 2021
[読みたい論文] 促進剤が位置を選ぶアシル化反応
NかOか。
Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60 (42), 22818−22825.

October 8, 2021
[読みたい論文] 窒素-ベンゼン環炭素の結合回転がギクシャクしてます
軸不斉かヘリシティか。
Org. Lett. 2021, 23 (19), 7492−7496.

October 7, 2021
[読みたい論文] 環化付加: アラインじゃなくてカルベンだった
脱カルボニルか脱炭酸か。
Org. Lett. 2021, 23 (19), 7376−7380.

October 6, 2021
[読みたい論文] プロパルギルエーテルの炭素-酸素結合を切断して離れたところにアルキル基をくっつけてアレンにします。
鉄触媒でいける。
Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60 (41), 22178−22183.

October 5, 2021
[読みたい論文] アルケンを異性化させながら特定の位置の炭素原子とホウ素原子をくっつけます。
chain walking。
J. Am. Chem. Soc. 2021, 143 (37), 14981−14986.

October 4, 2021
[読みたい論文] N-へテロ環カルベン触媒でラジカル的三成分連結
ラジカル機構を支持するデータとは。
Org. Lett. 2021, 23 (18), 7242−7247.

October 1, 2021
[読みたい論文] 光を使ってケトンのカルボニル炭素をカチオン性からアニオン性にします
プロトンか水素ラジカルか。
Org. Lett. 2021, 23 (18), 7194−7198.

September 30, 2021
[読みたい論文] 室温で進むHeck型C–Hアリール化
酸化的付加か親電子置換か。
Org. Lett. 2021, 23 (18), 7079−7082.

 

注目のWebコンテンツ

New 10 terms (October 14, 2021)
(Nanoniele)
http://nanoniele.blogspot.com/...

中国、SM輸入半減、続々新増設
(化学工業日報)
https://www.chemicaldaily.co.j...

分子の鎖を並べて柔らかい結晶を作る -気体を効率良く吸脱着できる多孔性材料への可能性-
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/202...

運動の内部モデル生成に関わる下オリーブ核の障害が姿勢維持機能を低下させるメカニズムを解明
(電気通信大学)
http://www.uec.ac.jp/news/anno...

世界初!微小管がメカノセンサーであることを実証 ~微小管の構造変化がモータータンパク質のダイナミクスを変調させることを解明~
(東京大学)
https://www.rcast.u-tokyo.ac.j...

トポロジカルスピン構造から生じる磁気光学応答の観測に成功
(科学技術振興機構)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...

トポロジカルスピン構造から生じる磁気光学応答の観測に成功
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...

世界初!微小管がメカノセンサーであることを実証~微小管の構造変化がモータータンパク質のダイナミクスを変調させることを解明~
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

膵臓癌由来の液性タンパク質の同定に成功 膵臓癌の早期発見につながる新規バイオマーカーの開発につながる可能性
(三重大学)
https://www.mie-u.ac.jp/R-navi...

“Stand by me”? -120人の研究者が音楽の進化的起源を議論-
(慶應義塾大学)
https://www.keio.ac.jp/ja/pres...

超伝導の仕組み解明へ大きな一歩 層状ニッケル酸化物超伝導体の電子構造を解明!―新たな高温超伝導体の探索のヒントに―
(大阪府立大学)
https://www.osakafu-u.ac.jp/pr...

ニンジンの摂取と低肥満度を結び付ける遺伝子型を同定
(新潟大学)
https://www.niigata-u.ac.jp/ne...

機械学習によるヨウ素の結合エネルギーの予測 従来法の1.3億倍のスピードでの予測に成功
(千葉大学)
https://www.chiba-u.ac.jp/gene...

世界初!微小管がメカノセンサーであることを実証 ~微小管の構造変化がモータータンパク質のダイナミクスを変調させることを解明~
(横浜市立大学)
https://www.yokohama-cu.ac.jp/...

子どもの8人に1人が医療サービスを必要とし、親もストレスを抱えやすい
(東京大学)
https://www.h.u-tokyo.ac.jp/pr...

運動の内部モデル生成に関わる下オリーブ核の障害が姿勢維持機能を低下させるメカニズムを解明
(東京大学)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focu...

石けんの泡層」への水の浸透現象を説明し予測できる簡易な数理モデルを提示~泡層内での効率的な汚れの輸送にも期待~
(東京農工大学)
https://www.tuat.ac.jp/outline...

“マッデン・ジュリアン振動” の「引き金」を特定 ―世界の天候に影響する巨大雲群発生の鍵は赤道上空の大気波動―
(お茶の水女子大学)
https://www.ocha.ac.jp/news/d0...

超小型非破壊検査装置「中性子塩分計RANS-μ」を開発 -鉄筋腐食に対するインフラの予防保全に貢献-
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/202...

新しいウシ受精卵培養系の開発による細胞分化機構の解明~ウシの基本設計の解明から畜産学の発展に期待~
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

分子の鎖を並べて柔らかい結晶を作る ~気体を効率良く吸脱着できる多孔性材料への可能性~
(科学技術振興機構)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...

光反応のエネルギー効率を大幅に向上させる新技術を開発 ~光磁場で三重項状態の直接励起を実現~
(科学技術振興機構)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...

パーキンソン病では前認知症段階で血中リンパ球が低下 ~先制治療・病態解明の鍵~
(科学技術振興機構)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...

パーキンソン病では前認知症段階で血中リンパ球が低下 -先制治療・病態解明の鍵-
(京都大学)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/r...

ナノスケールで物質の濃縮効果を発見 ~ナノ流体デバイスによる超微小気液界面の作製と効果~
(科学技術振興機構)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...

光反応のエネルギー効率を大幅に向上させる新技術を開発 ~光磁場で三重項状態の直接励起を実現〜
(神戸大学)
https://www.kobe-u.ac.jp/resea...

フェムト秒の光パルス照射で縦波光学フォノンをコヒーレント制御する、量子力学に基づく理論を構築 拡張されたモデルで偏光依存性の再現が可能に
(東京工業大学)
https://www.titech.ac.jp/news/...

トポロジカルスピン構造から生じる磁気光学応答の観測に成功
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/202...


学問・科学ランキング 科学ランキング 自然科学ランキング 化学ランキング