Archive|Nanoniele|MakiokaFufudo

 

[読みたい論文] BODIPY骨格にくっついているハロゲンをヨウ素原子に交換します

Viewed: 00:01:42 in June 26, 2025

Posted: November 16, 2021

Keywords: BODIPY; Suzuki–Miyaura coupling; Sonogashira coupling; Mizoroki–Heck reaction; Migita–Kosugi–Stille coupling; nucleophilic aromatic substitution; carbon–carbon bond formation; Hall, Michael J.; Knight, Julian G.; 有機化学; ブログ

Synthesis and Reactivity of 3,5-Diiodo-BODIPYs via a Concerted, Double Aromatic Finkelstein Reaction (Frank, Felicity J.; Waddell, Paul G.; Hall, Michael J.; Knight, Julian G.)
Org. Lett. 2021, 23 (21), 8595−8599.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.1c03317

 


芳香族求核置換によるハロゲン化BODIPYのハロゲン交換に関する論文のようです。

有機化学など、様々な分野で取り扱われるBODIPYですが、その特徴はさておき、BODIPY骨格を核とするπ共役化合物を作れば何かの役に立つだろうと容易に想像できます。

July 12, 2021
[読みたい論文] BODIPYのπ系を拡張してついでにフックもついてます
たくさん集まっても大丈夫。
Org. Lett. 2021, 23 (13), 5246−5250.

 

そんなBODIPY化合物を含め、有機合成ではより温和な条件や反応のイージーさが求められるわけで、例えば遷移金属触媒下でのクロスカップリングによる炭素-炭素結合形成にはより脱離能のある官能基が好ましい、と。そんな脱離基の一つがヨウ素原子で、著者さんたちは塩素原子や臭素原子などが結合したBODIPYとヨウ化ナトリウムから合成した、これがこの論文の主旨と想像しています。

要旨テキストにはFinkelstein反応とあります。これは有機化学の教科書、特に求核置換反応のあたりでよく取り扱われるハロゲン交換反応。この論文の反応はハロゲン化アリールの芳香族求核置換なのですが、BODIPYの性質故なのかかなり簡単に交換が進むようで、こりゃすごいねと思い読みたい論文に追加しました。

Supporting Informationを見るとハロゲン交換のよりも交換により得られたヨウ化物のクロスカップリングによるπ系の拡張に関するものが目立ちます。その中でお?と思ったのがMigita–Kosugi–Stilleカップリング。フェニルトリブチルスズとの反応では教科書的なフェニル化物とともにブチル化物も生成しており、考えて見ればそうだよなと思う一方で今までに報告されている同種の反応でもブチル化物はできているんだろうなとも。


合成したBODIPY骨格を核とするπ共役化合物については光物性も調べられています。濃度と発光強度の相関を見ているのはなんでかいなと最初思いましたが、BODIPY骨格があるからなんですね。濃度と発光強度が比例する、それがBODIPY、チョクセンバンチョー。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

計算終わりました

Chemical formula: C8H11F3O3S2Si
Molecular weight: 304.38
HOMO (eV): –6.551
LUMO (eV): –0.823
Dipole moment (D): 2.567482

読みたい論文シリーズ− 2021年4Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2021年10〜12月)。

2021年4Qの記事一覧
お仕事関係の記事のリストです(2021年10〜12月)。

 

November 15, 2021
[読みたい論文] ケイ素原子にくっついているベンゼン環が炭素原子へ移動するPrins反応
"up to complete selectivity"とは。
Org. Lett. 2021, 23 (21), 8385−8389.

November 12, 2021
[読みたい論文] コバルト触媒下でのアルキンのヒドロホウ素化
"up to complete selectivity"とは。
Org. Lett. 2021, 23 (21), 8199−8203.

November 11, 2021
[読みたい論文] 共役カルボン酸アミドのβ–炭素-水素結合を切断して共役カルボン酸エステルをエナンチオ選択的にくっつけます
幾何異性体も選択的に。
Org. Lett. 2021, 23 (21), 8158−8162.

November 10, 2021
[読みたい論文] β–フッ素脱離を伴うブテン酸アミドとボロン酸のクロスカップリング
同族金属触媒でも異なる選択性。
Org. Lett. 2021, 23 (21), 8122−8126.

November 9, 2021
[読みたい論文] 二酸化炭素を原料に高分子を合成します
二酸化炭素を含む炭素-炭素結合形成。
J. Am. Chem. Soc. 2021, 143 (44), 17953−17957.

November 8, 2021
[読みたい論文] 高分子の主鎖に側鎖の酸素原子を取り込みます
伸びる高分子鎖。
J. Am. Chem. Soc. 2021, 143 (44), 17931−17936.

November 5, 2021
[読みたい論文] アミノ酸由来の分子触媒で立体選択的なアルドール反応
ケイ素化合物が影でお助け。
Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60 (46), 24598−24604.

November 4, 2021
[読みたい論文] 平べったい配位子と金属が層状に重なるサマリウム3核錯体
ハンバーガー食いたくなる。
Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60 (46), 24493−24499.

November 2, 2021
[読みたい論文] 本当のところメカノケミカル反応てメリットあるの?
モデル反応は芳香族求核置換。
J. Org. Chem. 2021, 86 (20), 13983−13989.

November 1, 2021
[読みたい論文] 保護基でも配位子でもある配向基をくっつけてフェノールからシアノフェノールを作ります
配向基源は再利用可。
Chem. Lett. 2021, 50 (10), 1814−1817.

 

注目のWebコンテンツ

New 10 terms (November 16, 2021)
(Nanoniele)
http://nanoniele.blogspot.com/...

変性PPEの21年世界需要、横ばい 上期好調も下期伸び悩む
(化学工業日報)
https://www.chemicaldaily.co.j...

新型コロナウイルスの免疫逃避メカニズムの解明に成功~病態の理解と新規治療法への貢献に期待~
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

PFNの深層学習用スーパーコンピュータMN-3、39.38GFlops/Wの電力効率を記録しGreen500ランキングで3度目の世界1位を獲得
(神戸大学)
https://www.kobe-u.ac.jp/resea...

半導体原子シートの新たな核形成過程を直接観測 ― 次世代フレキシブル透明デバイスの実用化に貢献 ―
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...

呼吸器疾患に関連する遺伝子座を同定 ~慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息の病因解明へ~
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...

遺伝性脳小血管病に対するカンデサルタンの有効性を確認 -遺伝性脳小血管病に対するカンデサルタンの有効性を確認-
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/202...

均整のとれたレンガ塀構造を持つ有機半導体を開発 ―優れた電荷移動特性を理論的、実験的に証明―
(東京大学)
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/in...

様々な病原体の宿主であるオオコウモリのミニ臓器の作製に成功〜感染症研究の新たな糸口に〜
(東京農工大学)
https://www.tuat.ac.jp/outline...

廃棄物からのリンおよびエネルギー高効率回収に向けて―リンを含む灰粒子が高温条件で付着する現象を解明―
(東京農工大学)
https://www.tuat.ac.jp/outline...

遺伝性脳小血管病に対するカンデサルタンの有効性を確認-脳動脈硬化の新たな治療法として期待-
(新潟大学)
https://www.niigata-u.ac.jp/ne...

水たまりに油膜ができる現象を利用して高機能シート材料を簡単に作製 ―センサや電池向けのナノ材料を常温常圧下で作製可能に―
(東京大学)
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/in...

ヒストンメチル化酵素NSD2は発がん性変異により安全装置が外れ、制御不能になる
(横浜市立大学)
https://www.yokohama-cu.ac.jp/...

単分子の電気化学反応を追う!EC-TERSとは?
(Chem-Station)
https://www.chem-station.com/b...

自動運転における重大な問題をシミュレーションで検出する技術を開発 ~問題が発生するかを探り、起こりうる問題だけを効率的に自動探索~
(国立情報学研究所)
https://www.nii.ac.jp/news/rel...

併用薬と好中球/リンパ球数比を組み合わせることで免疫チェックポイント阻害薬治療の予後を予測できることを発見-有効性を改善するための新たな手法の展開に期待-
(慶應義塾大学)
https://www.keio.ac.jp/ja/pres...

ヒストンメチル化酵素NSD2は発がん性変異により安全装置が外れ、制御不能になる
(量子科学技術研究開発機構)
https://www.qst.go.jp/site/pre...

「認知症の原因タンパク質が脳炎症を起こす仕組みを解明」 ―脳のミクログリアはタウ蛋白をウィルスと間違える?―
(東京医科歯科大学)
https://www.tmd.ac.jp/press-re...

新型コロナウイルス感染症(ハムスターモデル)の治療に成功 VHH抗体の経鼻投与法により臨床応用に大きく前進
(北里大学)
https://www.kitasato.ac.jp/jp/...

動く分子を見て、触って、学べる「VR-MD」誕生 −スマホでサクサク動くVRアプリで楽しく化学を学ぼう!−
(東京大学)
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/fo...

様々な計算を何ステップでも実行できる万能な光量子プロセッサを開発 ―日本発「究極の大規模光量子コンピュータ」実現に道―
(東京大学)
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/fo...

肺がんの免疫療法に対する新規耐性メカニズムの解明 がん免疫療法の新たな治療標的の発見
(大阪大学)
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja...

「イボガエル」は水中でも鳴くことを初めて発見(動画有り)!
(九州大学)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/4...

日本の男女格差の原因は何か?新しい性別役割尺度の開発に成功! ―男性は伝統的な性別役割意識を持つ―
(九州大学)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/4...

スーパーコンピュータ「富岳」が Graph500 において 4 期連続で世界第 1 位を獲得 -ビッグデータの処理で重要となるグラフ解析で最高レベルの評価-
(九州大学)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/4...

愛情ホルモンで知られる「オキシトシン」の新規アンタゴニストを発見 ~新規の早産治療薬開発やオキシトシンの進化・構造解明に期待~
(名古屋大学)
https://www.nagoya-u.ac.jp/abo...

機械学習を活用した効率的なネオジム磁石の高特性化に成功 ~限られた実験データから最小限の実験でネオジム磁石の最適な作製条件を予測~
(物質・材料研究機構)
https://www.nims.go.jp/news/pr...

血流感染症特異的治療薬の開発プロジェクトを開始 ~敗血症や多剤耐性菌感染症治療への貢献に期待~
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

成体脳におけるシナプス維持機構の解明~神経障害時における回路再編機構解明への貢献に期待~
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

細胞外で複製し進化する人工ゲノムDNAを開発 ~自律的に増殖し進化する人工細胞の構築に期待~
(科学技術振興機構)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...

臍帯血DNAメチル化情報の公開 ~胎児期の情報を集積した世界初の試み~
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...

2個の電子スピンの向きが揃った炭化水素分子の合成に成功―有機磁性材料の創出に期待―
(大阪市立大学)
https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/...

悪性リンパ腫の臨床予後を規定する免疫微小環境を同定 ~新たな予後予測モデルの構築へ~
(九州大学)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/4...

生活保護受給者の糖尿病有病実態解明 -200万人のレセプトデータ解析-
(京都大学)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/r...

高温超伝導線の交流損失を20分の1に低減 -脱炭素に貢献する電気機器の超伝導化に道筋-
(京都大学)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/r...

ニトロゲナーゼ活性中心への硫黄原子導入過程の解析 -窒素固定を支える含硫黄小分子の発見-
(京都大学)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/r...


学問・科学ランキング 科学ランキング 自然科学ランキング 化学ランキング