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[読みたい論文] キノンのアセタールとビニルエーテルからジヒドロジベンゾフラン骨格を作ります

Viewed: 02:41:55 in July 6, 2025

Posted: December 7, 2021

Keywords: annulation; 1,4-benzoquinone; 3,4-dihydro-2H-pyran; HFIP; TBAOTf; TFE; Kita, Yasuyuki; 有機化学; ブログ

[3 + 2] Coupling of Quinone Monoacetals with Vinyl Ethers Effected by Tetrabutylammonium Triflate: Regiocontrolled Synthesis of 2-Oxygenated Dihydrobenzofurans (Kamitanaka, Tohru; Tsunoda, Yusuke; Fujita, Yuriko; Dohi, Toshifumi; Kita, Yasuyuki)
Org. Lett. 2021, 23 (23), 9025−9029.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.1c02792

 


ジヒドロベンゾフラン骨格形成に関する論文のようです。

基質はベンゾキノンの片方のC=Oの部分がジアルキルアセタールとなった化合物、そしてビニルエーテルです。Graphical Abstractでは環状ビニルエーテルの反応が描かれていますが、「環状」でなくても良さそうですし、さらにはビニルエーテルでなくてアルケンでも反応は進む模様。

要はベンゾキノン側のアセタール部分の炭素-酸素結合をを酸触媒で切断して炭素陽イオンを発生、共鳴の極限構造のひとつとして描かれる炭素陽イオンとビニルエーテルの電子豊富な方のアルケン炭素が結合、結果発生するビニルエーテルの「もう一方」のアルケン由来の炭素陽イオンとベンゾキノンのC=O酸素が結合、と文字にするととてもややこしいですが、そういうことなのでしょう。

そういう視点でSupporting Informationを見ていくと、ありました。cis/trans構造のビニルエーテルの混合物の反応。ビニルエーテルのcis/trans比と生成物のcis/transが異なっています。つまりこの反応での[3+2]環化付加が協奏的にではなく段階的に進んでいる、と(そんな気がします)。正確なところを本文を読んで知りたいところです。


この論文の反応で得られた生成物、おそらくは何か有用なものに変換されることが期待されているのでしょうね。ベンゼン環を水素化したらどうなるかとか。研究の背景、そしてこの研究の行き先を知りたくて、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

計算終わりました

Chemical formula: C9H9ClO3
Molecular weight: 200.62
HOMO (eV): –5.955
LUMO (eV): –0.277
Dipole moment (D): 3.185389

 

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