Archive|Nanoniele|MakiokaFufudo

 

[読みたい論文] ケトンとアンモニウム塩と水素から光学活性アミンを合成します

Viewed: 18:38:58 in June 25, 2025

Posted: May 18, 2021

Keywords: Ru; (S)-BINAP; asymmetric synthesis; ee; 2-acetylpyridine; hydrogenation; directing group; Yamada, Masatoshi; 有機化学; ブログ

Highly Enantioselective Direct Asymmetric Reductive Amination of 2-Acetyl-6-Substituted Pyridines (Yamada, Masatoshi; Azuma, Kazuki; Yamano, Mitsuhisa)
Org. Lett. 2021, 23 (9), 3364−3367.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.1c00848

 


不斉水素化を経る光学活性アミンのエナンチオ選択的合成に関する論文のようです。いわゆる米印が筆頭著者のところに付いているのがレアだなと思いながらSupporting Informationを眺め始めたところで納得。

基質はケトンとトリフルオロ酢酸アンモニウムと水素。論文の肝の部分はイミンの水素化のところなのでしょう。水素化に使いイミンはケトンと酢酸アンモニウムから。生成物はフリーのアンモニアのトリフルオロ酢酸塩と想像しますが、後処理で塩酸塩としているようで。

Graphical Abstractを見ておや?と思うのは、基質であるケトンがアセチルピリジン化合物であること。アセチル云々、つまりメチルケトンであるのは良くあることです。メチルフェニルケトンであることも。でもピリジン骨格がカルボニル基にくっついているんですよね、論文の反応で扱われているケトンには。

なんでだろうと要旨テキストを読んでいくと、ピリジンの他にβ–ケトエステルやβ–ケトアミドもとあり、どんなもんなんかいなとSupporting Informationにある実験例を見ていくと、なんとなくこれかなというものが。

Directing group。配向基。ええっと、中学校の近くのお好み焼き屋に置いてあるマンガで読んだ呪われたグローブの話。当時ゲラゲラ笑ったのをまた思い出しました。今の大御所漫画家達ののデビュー連載をリアルタイムで読めたいい時代だったのかも、ってなんの話だっけな。

まあそんあこんなで読みたい論文に追加です。Directing groupが論文に登場する度に思い出しているような。あのマンガ、化学との親和性が高いのか?

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

計算終わりました

CAS-RN: 2039-82-9
Chemical formula: C8H7Br
Molecular weight: 183.05
HOMO (eV): –6.075
LUMO (eV): –1.085
Dipole moment (D): 1.906847

 

あわせてどうぞ

読みたい論文シリーズ− 2021年2Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2021年4〜6月)。

2021年2Qの記事一覧
お仕事関係の記事のリストです(2021年4〜6月)。

 

May 17, 2021
[読みたい論文] 2級アルコールと1級アルコールの交差Guerbet型反応です。
制限はあるのか?。
Org. Lett. 2021, 23 (9), 3320−3325.

May 14, 2021
[読みたい論文] 極性変換しまくりのアシルボロン酸混合無水物とハロゲン化アリールのクロスカップリング
最後は還元的脱離。
Org. Lett. 2021, 23 (9), 3294−3299.

May 13, 2021
[読みたい論文] ミセルの中でケトンを不斉還元します
銅触媒とヒドロシラン。
Org. Lett. 2021, 23 (9), 3282−3286.

May 12, 2021
[読みたい論文] アルデヒドを使ってインドールの窒素原子をアルキル化します
アルデヒドを使う意義。
Org. Lett. 2021, 23 (9), 3233−3236.

May 11, 2021
[読みたい論文] アルミニウム-窒素三重結合を持つ化合物を作っていろいろ調べました
そこらへんの土のような見た目。
J. Am. Chem. Soc. 2021, 143 (17), 6351−6356.

May 10, 2021
[読みたい論文] 有機触媒と銅触媒を組み合わせてメチルケトンのメチル炭素とカルボニル基の付いた3級炭素をつなげます
3級である理由
Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60 (19), 10620−10625.

May 7, 2021
[読みたい論文] カルボキシル基とフルオロ基が脱離するアルキル-アリールカップリング
フッ素でつなぐ反応経路
Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60 (19), 10557−10562.

May 6, 2021
[読みたい論文] 複数の異性体の中のひとつが選択的に生成するアルキンとヒドロゲルマンの反応
セールスポイントは?
Org. Lett. 2021, 23 (8), 3221−3226.

April 30, 2021
[読みたい論文] ボラン-アンモニア触媒下でカルボン酸とアミンからカルボン酸アミドを合成します
ボランの成れの果ては。
Org. Lett. 2021, 23 (8), 2938−2942.

 

注目のWebコンテンツ

New 10 terms (May 18, 2021)
(Nanoniele)
http://nanoniele.blogspot.com/...

光の磁場成分を増強するナノアンテナで未開拓な光学遷移の増強に成功 〜新しい光化学反応経路の開拓に期待〜
(神戸大学)
https://www.kobe-u.ac.jp/resea...

新型コロナ/慶大など、日本人における重症化因子の有力候補発見
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

HCFC-142bが急伸、年初比2倍、LiB関連需要拡大
(化学工業日報)
https://www.chemicaldaily.co.j...

幻覚作用を示す
(村井君のブログ)
http://murai-kun.cocolog-nifty...

精子形成におけるDNAメチル化の役割を解明 -NP95とDNMT1の減数分裂期における新機能を発見-
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/202...

温室効果・オゾン層破壊の原因である亜酸化窒素の生物的発生機構の解明
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/202...

広島大学先端科学セミナー「ゲノム編集で未来を拓く」
(ぼうのブログ)
http://bonohu.jp/blog/genome-e...

北極域の森林火災と西欧熱波を同時誘発させうる気候パターンを初めて特定~北極域とその周辺で起こる夏季森林火災と熱波同時発生予測手法の発展とその高精度化への期待~
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

iPS細胞×ゲノム編集 がん免疫療法のための"ステルスファイターT細胞"を作製する
(京都大学)
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp...

光の磁場成分を増強するナノアンテナで 未開拓な光学遷移の増強に成功 ~新しい光化学反応経路の開拓に期待~
(科学技術振興機構)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...

「コロナ制圧タスクフォース」日本人集団における新型コロナウイルス感染症重症化因子の有力候補を発見-アジア最大のグループとして新型コロナウイルス感染症国際ゲノム研究にも大きな貢献-
(慶應義塾大学)
https://www.keio.ac.jp/ja/pres...

新たな原理に基づく高分子配向薄膜の作製に成功 ~ガス分離膜、水浄化膜への応用に期待~
(山形大学)
https://www.yamagata-u.ac.jp/j...

細胞を傷つけずに評価する技術を開発-再生医療に用いる細胞の品質管理-
(新潟大学)
https://www.niigata-u.ac.jp/ne...

精子形成における DNA メチル化の役割を解明 〜NP95 と DNMT1 の減数分裂期における新機能を発見〜
(熊本大学)
https://www.kumamoto-u.ac.jp/d...

「コロナ制圧タスクフォース」日本人集団における 新型コロナウイルス感染症重症化因子の有力候補を発見
(東京医科歯科大学)
https://www.tmd.ac.jp/topics_d...

自動運転の危険性・適用性を IT技術で事前に評価・保証する技術を開発 ~「自動運転向けデジタルリスクアセスメント」事業に活用~
(名古屋大学)
https://www.nagoya-u.ac.jp/abo...

オキシトシンの分泌を制御するタンパク質を発見! ~自閉症の早期分子診断法や治療法開発に光~
(東京理科大学)
https://www.tus.ac.jp/today/ar...

微生物生態系の安定性を俯瞰できる新手法 -腸内細菌叢の変動予測や制御への応用に期待-
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

免疫チェックポイント阻害療法抵抗性攻略へ一歩前進~難治性癌治療への貢献に期待~
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

細胞内抗体プローブを用いて 遺伝子の転写が活性化している細胞を生体内で特定することに成功
(科学技術振興機構)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...

微生物生態系の安定性を俯瞰できる新手法 -腸内細菌叢の変動予測や制御への応用に期待-
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/202...

試験管内で染色体を作る -トポイソメラーゼⅡαが密な環境で働く仕組みを解明-
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/202...

小惑星で起こった衝突残留熱が、地球の水や生命材料を生み出す水質変成や有機物合成を引き起こすか
(神戸大学)
https://www.kobe-u.ac.jp/resea...


学問・科学ランキング 科学ランキング 自然科学ランキング 化学ランキング