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[読みたい論文] オキシムとDASTからイミドイルフルオリドを作ります

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Posted: May 31, 2023

読みたい論文シリーズ− 2023年2Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2023年4〜6月)。

 

Keywords: DAST; SuFEx; Beckmann rearrangement; THF; Ohwada, Tomohiko

Isolation and Reactions of Imidoyl Fluorides Generated from Oxime Using the Diethylaminosulfur Trifluoride/Tetrahydrofuran (DAST–THF) System (Lu, Yipu; Kasahara, Akitomo; Hyodo, Tadashi; Ohara, Kazuaki; Yamaguchi, Kentaro; Otani, Yuko; Ohwada, Tomohiko)
Org. Lett. 2023, 25 (19), 3482–3486.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.3c01063

 


イミドイルハライド合成とその利用に関する論文のようです。

[読みたい論文] 二酸化炭素をC1源にしてフッ化カルバモイルを合成します
DASTを使います。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (36), 12545−12548.

 

ケトン由来のオキシムと三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄(DAST)の反応。オキシム炭素に結合している有機基が窒素原子上に転位したイミドイルフルオリドが生成するそうです。イミドイルフルオリドを水で処理すればカルボン酸アミドになる旨、Graphical Abstractに描かれています。有機化学の教科書に載っている、Beckmann転位ですね。Beckmann転位ではオキシムのOH基に対してトランス側の有機基が転位することが知られていますが(もちろん例外もあり)、この論文の反応でもそうなのか、本文を読んで確かめたいところです。

Supporting Informationには、イミドイルフルオリドと様々な求核剤の反応の例が、one-pot反応も含めて記述されています。これ、クリック反応なのかそうでないのか、知りたいところです。他、計算などによる反応機構が考察されていますが、テトラヒドロフラン(THF)が反応に必須なのか、ないとどうなるのかも気になりますね。

そんなわけで、色々知りたいことがあるので、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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2023年2Qの記事一覧
記事のリストです(2023年4〜6月)。

 

 

May 30, 2023
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