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[読みたい論文] 有機塩触媒でClaisen転位

Viewed: 21:49:05 in June 25, 2025

Posted: June 25, 2024

読みたい論文シリーズ− 2024年2Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2024年4〜6月)。

 

Keywords: trityl; BARF; LiHMDS; carbon–carbon bond formation; Claisen rearrangement; Houk, Kendall N.; Nelson, Hosea M.

Main Group-Catalyzed Cationic Claisen Rearrangements via Vinyl Carbocations (Williams, Chloe G.; Nistanaki, Sepand K.; Dong, Krista; Lee, Woojin; Houk, Kendall N.; Nelson, Hosea M.)
Org. Lett. 2024, 26 (23), 4847–4852.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.4c00837

 


炭素-炭素結合形成に関する論文のようです。

June 7, 2023
[読みたい論文] ケトン由来のビニルカチオンを発生させてエステル由来のシリルエノラートと反応させます
そこに置換基がある理由。
Org. Lett. 2023, 25 (20), 3591–3595.

 

テトラアリールホウ酸トリフェニルメチル触媒下でのp–トルエンスルホン酸アルケニルとアリルシリルエーテルの反応。両者の特定の位置の炭素原子同士が結合し、γ,δ–不飽和カルボニル化合物が生成するのだとか。

反応の過程での重要な中間体の構造式がGraphical Abstractに描かれています。p–トルエンスルホン酸アルケニルから発生したアルケニルカチオンとアリルシリルエーテルが反応してできたオキソニウム中間体のClaisen転位が起きる、ということなのでしょう。TsOを脱離させる触媒の強引さがすごい。反応に使われるLiHMDSの成れの果てはTsOLiとTMS–HMDSといったところでしょうか。


ふんふんと要旨を眺めていてふと思ったのですが、これ、Claisen転位であることをどう確かめたのでしょう。著者さんたちの提唱する反応機構であれば反応のジアステレオ選択性がきっちり出るような気がします。そのあたりどうなっているのか気になるので、読みたい論文に追加しましt。

そういえばこの反応の触媒、トリフェニルメチル基/イオンはトリチル基/イオンと呼ばれることもあります。トリチル化合物のひとつがトリチルクロリド(Ph3CCl)。で、名称も分子式も同じ別の化合物があって、こいつが猛毒で取り扱い注意なやつ。発注の際には間違いのないように。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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