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シクロヘキサンの椅子型-ねじれ舟型の相互転換途中の配座が計算できました

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Keywords: cyclohexane; 有機化学; ブログ

Posted: July 18, 2020

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

シクロヘキサンの代表的な立体配座の安定性について計算をしようと分子モデリングをしていた時に、謎な構造ができてしまったので、ついでにDFT計算で構造を最適化してみました[B3LYP/6-31G(d), 単分子]。下の画像はその初期構造。それぞれ炭素原子、水素原子が6つずつ、同一平面上にあるというもの。このモデリングソフト(Avogadro)は時々こういう妙ちくりんな構造を吐き出してくれます。


この初期構造から最適化を試みると、椅子型配座のシクロヘキサンに到達します。それだけだとつまらないので、この初期構造から鞍点探索を。

得られた構造は下の画像のようなものでした。半いす形と呼ばれるものですね。振動解析では虚の振動数が一つで、安定配座ではなく遷移状態の模様。


この構造からIRC解析を行うと、一方は椅子型、もう一方は船型(ねじれ船型)に到達。というわけで、上の構造はシクロヘキサンの椅子型-ねじれ船型相互転換の遷移状態、ということになります。ΔG差(298 K)は下の図の通り。Wikipediaにある数字との矛盾はなさそうです。


あとは「ねじれてない」船型配座、か。

 

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