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[読みたい論文] 金属要らずの臭化アルキルの脱臭素ボリル化

Viewed: 19:45:18 in June 25, 2025

Posted: June 23, 2025

読みたい論文シリーズ− 2025年2Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2025年4〜6月)。

 

Keywords: visible light photoredox catalysis; organic photoredox catalyst; transition metal free; catecholate; Noble, Adam; Aggarwal, Varinder K.

Persistent Boryl Radicals as Highly Reducing Photoredox Catalysts for Debrominative Borylations (Wu, Jingjing; Wang, Hui; Fang, Huaquan; Wang, Kevin C.; Ghosh, Deborin; Fasano, Valerio; Noble, Adam; Aggarwal, Varinder K.)
J. Am. Chem. Soc. 2025, 147 (23), 19450–19457.
URL (Doi): 10.1021/jacs.5c03864 


ラジカルの化学に関する論文のようです。

October 11, 2024
[読みたい論文]青色光でアルデヒド-アルケンカップリング
学生実験のあれ。
J. Am. Chem. Soc. 2024, 146 (39), 26616–26621.

 

ビピリジンと青色光の存在下での臭化アルキルとジボロンの反応。ジボロンをホウ素-ホウ素結合のところで半分にして、臭化アルキルのアルキル基をくっつけた構造の化合物が生成します。安定に単離できるようにピナコールでエステル交換が行われています。

この論文の反応で生成する化合物と同じ構造のものは別法で合成可能ではありますが、反応に金属を要しないことに新規性があるのかとボーッと要旨を見るとそうでもなさそう。著者さんたちは合成反応そのものよりも触媒に興味があるようで、ビピリジンとジボロンから発生するボリルラジカル、こいつに注目して論文を読み進むのがいいんじゃないかと思いました。


このボリルラジカル、ラジカルとしては超寿命で存在できるようで、しかも光励起でよりパワフルな電子供与能を発揮する模様。これを有機反応の触媒として利用できますよ、例えばこの論文の反応のようにというのが、大体のストーリーかなと予想しています。

そんなわけでそういう構成の論文なのか確かめたくて、読みたい論文に追加した次第です。他の反応について試しているのかも知りたい。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
今はその名ではない、某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
Xアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

この記事を書いた人の日常

 
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