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[読みたい論文] 酸化には酸素化とか脱水素とかあるからそこらへんを使い分けられるようにした反応

Viewed: 06:03:09 in July 18, 2025

Posted: July 18, 2025

読みたい論文シリーズ− 2025年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2025年7〜9月)。

 

Keywords: RFTA; C–H bond activation; carbon–carbon bond formation; K2S2O8; oxidation; Wennemers, Helma

Regiodivergent α- and β-Functionalization of Saturated N-Heterocycles by Photocatalytic Oxidation (Rackl, Jonas W.; Müller, Alexander F.; Profyllidou, Antonia; Wennemers, Helma)
J. Am. Chem. Soc. 2025, 147 (27), 23381–23386.
URL (Doi): 10.1021/jacs.5c06177 


選択的酸化に関する論文のようです。

January 29, 2020
[読みたい論文] 遷移金属触媒が不要な分子内環化を経るベンゾチアゾール合成
過硫酸カリウムを使います。
Org. Lett. 2020, 22 (2), 610−614.

 

4酢酸リボフラビン触媒/青色光照射下での、保護されたアミンと過硫酸カリウムの反応。有機化合物、特に炭化水素の酸化反応というと、アルコールやケトン、カルボン酸といった酸素原子を含む化合物に変換する酸素化と、水素原子が脱離する脱水素化がありますが、塩基の種類によりどちらかの反応だけを起こすことができる、ということなのでしょう。

具体的には、塩基が炭酸セシウムの場合にはアミノアルコールが、2,6-ルチジン(= 2,6-ジメチルピリジン)だとエナミンが生成。アミノアルコールだと、アミンの窒素原子が結合しているOH基を脱離基とする反応により、エナミンだと、電子豊富な「その隣の」炭素原子への求電子付加等により、様々な官能基を導入できるのだとか。

酸素化か脱水素化へ分岐する直前の反応中間体は下のような構造のようです。炭酸セシウムとの反応により生じたOHが攻撃すればアミノアルコール、2,6–ルチジンによるプロトンの脱離が起こればエナミンになるとのこと。2,6–ルチジンの何がプロトン脱離を有利にするのかが気になります。もしかしたらプロトンのようなイオン的なものではなくラジカル的な脱離なのではと一瞬だけ思いましたが、2,6–ルチジンの嵩高さがいいのかもしれません。


そんなわけで塩基の役割について知りたいので、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
今はその名ではない、某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
Xアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

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