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[読みたい論文] 超原子価ヨウ素を使ってアニリンのベンゼン環に求核剤をくっつけます

Viewed: 15:44:36 in July 14, 2025

Posted: July 14, 2025

読みたい論文シリーズ− 2025年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2025年7〜9月)。

 

Keywords: electrophilic aromatic substitution; PIDA; Hazra, Chinmoy Kumar

One-Pot Regioselective Functionalization of Quinone Imine Ketals: Direct Access to ortho-Substituted Anilines from Arylamines (Yadav, Naveen; Mahato, Rina; Pal, Smritikana; Dey, Mainak; Hazra, Chinmoy Kumar)
Org. Lett. 2025, 27 (25), 6566–6570.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.5c01135 


炭素-水素結合切断に関する論文のようです。

September 3, 2024
[読みたい論文] ケトカルボン酸のFriedel–Crafts型環化
還元されるかされないか。
Chem. Commun. 2024, 60 (69), 9274–9277.

 

ジアセトキシヨードベンゼンが介するp–アルコキシアニリンと求核剤の反応。アニリンのo–炭素-水素結合が切断し、求核剤が結合した構造の化合物が生成します。同様の反応は遷移金属触媒下でのクロスカップリングでも見られますが、この論文の反応では遷移金属は不要。

求核剤としては、Graphical Abstractをぱっと見た限りではアルコールとかかなと思いましたが、Supporting Informationを見たら違っていました。反応例としてよくあるのが1,3,5–トリメトキシベンゼンなどのアレーン。


反応機構がどんなものなのか、何かヒントがないかと読み進んでいくと、下の構造の中間体が。ここから求核剤がどう反応していくのか気になりますし、この中間体からではないのではとも思ったり。個人的にはジアセトキシヨードベンゼンとp–アルコキシアニリンからジアリールヨードニウム塩が発生しているのではと根拠もなく想像しましたが、著者さんたちの考えるメカニズムは本文中にあるでしょうから、そこで確認したいところ。


そんなわけで読みたい論文に追加しました。求核剤との反応と謳っているけど、p–アルコキシアニリンは求電子剤として反応していくわけですよね。芳香族求電子置換。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
今はその名ではない、某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
Xアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

この記事を書いた人の日常

 
ありがたいものが届きました

 

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記事のリストです(2025年7〜9月)。

 

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