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[読みたい論文] ケトカルボン酸のFriedel–Crafts型環化

Viewed: 22:57:39 in July 5, 2025

Posted: September 3, 2024

読みたい論文シリーズ− 2024年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2024年7〜9月)。

 

Keywords: Friedel-Crafts; TfOH; triethylsilane; HFIP; Hazra, Chinmoy Kumar

Synthesis of tetralone and indanone derivatives via cascade reductive Friedel–Crafts alkylation/cyclization of keto acids/esters (Yadav, Naveen; Mahato, Rina; Khan, Jabir; Jaiswal, Harshit; Hazra, Chinmoy Kumar)
Chem. Commun. 2024, 60 (69), 9274–9277.
URL (Doi): http://dx.doi.org/10.1039/D4CC02754J

 


芳香族求電子置換に関する論文のようです。

November 16, 2023
[読みたい論文] スカンジウム触媒を使ってベンゾフラン骨格をうまいこと作ります
希土類でFriedel–Crafts反応。
Org. Lett. 2023, 25 (43), 7890–7894.

 

トリエチルシランと触媒量のトリフルオロメタンスルホン酸の存在下での、アレーンとケトカルボン酸又はエステルの反応。ケト基とカルボキシル基の炭素原子が芳香環に結合した環状化合物が生成します。論文のタイトルや要旨テキストにもあるように、反応の様式は有機化学の教科書によく載っているFriedel–Crafts型アルキル化とアシル化。

アルデヒドやカルボン酸を使うアレーンの直接的Friedel–Crafts反応の例はどこかで見た記憶があるのですが、ケトンのはないなと思いながら論文のTOCを眺めていました。この論文ではどうやっているのだろうと、反応スキームに目をやると…トリエチルシラン

なるほどと思いました。ケトンをトリエチルシランでヒドリド還元してアルコール(かそのシリルエーテル)にし、強酸との反応でカルボカチオンを発生させる、というわけなのですね。このヒドリド還元はカルボン酸(やエステル)には適用できないから、そっちは強酸と作用させればアシルカチオンに、と。結果片方はアルキル化、片方はアシル化に。

気になるのはFriedel–Crafts反応の泣き所。位置選択性と基質の適用範囲なわけですが、その辺どうなのか知りたいので、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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