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[読みたい論文] アルキル基が脱離基となる形式的な求核置換反応

Viewed: 02:31:02 in July 6, 2025

Posted: August 30, 2024

読みたい論文シリーズ− 2024年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2024年7〜9月)。

 

Keywords: carbon-carbon bond cleavage; PIFA; Mosey, R. Adam

Constructing new bonds to carbon in dihydroquinazolines via hypervalent iodine(III)-mediated C(sp3)–C(sp3) bond functionalization (Carlson, Haley M.; Marshall, Abigail R.; Burton, Kaylin M.; Mosey, R. Adam)
Chem. Commun. 2024, 60 (68), 9097–9100.
URL (Doi): 10.1039/D4CC02412E

 


炭素-炭素結合切断に関する論文のようです。

May 24, 2024
[読みたい論文] ハロホルム反応をうまいこと使ったエステル合成
メチルケトンとアルコールから。
Angew. Chem. Int. Ed. 2024, 63 (21), e202400570.

 

ヨードニウム塩が介する、ええっとなんだこれジヒドロキナゾリン、上の反応スキームの左側の構造式の化合物と求核剤の反応。反応に使われる溶媒は求核剤の種類により異なるようで、Supporting Informaitonを見るとアセトニトリルや1,2–ジクロロエタンやトルエン、1,1,1,3,3,3–ヘキサフルオロ–2–プロパノールなど。分子中のtert–ブチル基が求核剤と入れ替わった構造の化合物が生成するとのこと。形式的になのでしょうが、アルキル基が脱離基として振る舞う置換反応、すごいなと思いましたが、例自体はすでに報告されているようで。

んで反応のカラクリはというと、容姿テキストに"mesolytic cleavage"とあるように、反応の過程で炭素-炭素結合開裂によりラジカル種とイオン種が発生。恐らくは前者がtert–ブチルラジカル、後者がヒドロキナゾリルカチオンなのでしょう。ヨードニウム塩(= 3価ヨウ素化合物)が酸化剤として機能している、と。確かにちょうどいい位置にtert–ブチル基がありますね。ベンジルカチオンとかイミニウムイオンとか。

炭素-ヨウ素結合の形成が一旦起こるのかを知るには、著者さんたちのコメントを読む必要がありそう。

気になるのはtert–ブチル基の成れの果て。一体どんな姿なのか、単純に興味があるので、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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