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[読みたい論文] アルキンのブロモアリール化でβ-ブロモスチレンを作ります

Viewed: 10:43:16 in July 2, 2025

Posted: March 24, 2020

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

Keywords: Ni; Mn; cod; dtbpy; NMP; EPR; 読みたい論文シリーズ; Matsubara, Seijiro; 有機化学; ブログ

Nickel-Catalyzed Intermolecular Carbobromination of Alkynes (Takahashi, Toshifumi; Kurahashi, Takuya; Matsubara, Seijiro)
ACS Catal. 2020, 10 (6), 3773−3777.


ニッケル触媒下での内部アルキンと臭化アリールの反応に関する論文のようです。β-ブロモスチレン化合物が生成します。

内部アルキンと臭化アリールの反応といえば、アリール基がアルキンに付加してβ–水素脱離とかで、「臭化」の方はどこかに行ってしまう(大体は塩になる)のが常。ところがこの論文の反応では臭素原子もアルキンのsp炭素と結合しており、その炭素–臭素結合がマンガン還元剤やニッケル触媒にも耐えている。この現象がなんとも不思議で、反応系中で何が起きているのか知りたく、読みたい論文に追加しました。

この個人的に謎な反応、要旨テキスト中では系中で発生した高原子価のニッケル種[Ni(III)]の寄与によるものと説明されており、Supporting Information中にもNi(III)前駆体であるNi(I)の存在を確認するためのEPR測定のデータがあるなど、色々考察されており、推定される触媒サイクルが本文中に記されていると期待されますので、反応機構を中心に、本文を読んで色々確認したいところです。Z体が優先して生成する理由も。

この記事を書くために作成したChemDrawファイル(.cdxml)をダウンロードできます。
ご自由にお使いください。

 

有機化学初心者向けコメント

☆s軌道

原子を構成している電子の軌道の1つ。雑に言えば球のような形。
「(いろんな意味での)大きさ」にあわせて、1s軌道, 2s軌道, 3s軌道, …と呼ばれる。
水素原子は1s軌道に電子を1つ、ヘリウム原子は1s軌道に電子を2つ持つ。リチウム原子は1s軌道に2つ、2s軌道に1つ。

 

計算終わりました

 

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