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[読みたい論文] SuFEx反応剤のスルホ基をアルケンの炭素にくっつけます

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Posted: April 12, 2023

読みたい論文シリーズ− 2023年2Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2023年4〜6月)。

 

Keywords: SuFEx; Hantzsch ester; transition metal free; hydrogen atom transfer; single electron transistor; Molander, Gary A.

Alkyl (Het)Arylsulfones from SuFEx Reagents via Photochemical S–F Bond Activation (Shreiber, Scott T.; Molander, Gary A.)
Org. Lett. 2023, 25 (12), 2084–2087.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.3c00447

 


硫黄(IV)-フッ素交換反応剤の利用に関する論文のようです。

February 28, 2023
[読みたい論文] スルホン酸アミドを3成分連結で合成します
クロロスルホン酸アミドとアルケンと求核剤。
Org. Lett. 2023, 25 (6), 1014–1019.

 

クリック反応の一つである硫黄(IV)-フッ素交換(SuFEx)、主に酸素や窒素求核剤の反応によるスルホン酸エステルや同アミドがありますが、大抵の様式は求核置換であり、ラジカルタイプのものてあまり見かけない気がしていました。そんな中報告されたのがこの論文。

この反応自体がSuFExなのかは正直なんともというか、とはいえSuFEx反応剤を使った反応であることは間違いないです。光照射下で進むもので、触媒はチオフェノールのベンゼン環のパラ位にメトキシ基がくっついたもの。チオフェノールすごく臭いから、こいつも臭いんかなと想像します。嗅いだことはありません。

SuFEx反応剤であるアレーンスルホニルフルオリドと反応させるのはアルケン。生成物はアルケンのヒドロスルホニル化物で、「ヒドロ」は共存させているHantzschエステルから。形式的にフッ化水素が出てくるので、K2HPO4で補足するのでしょう。スチレン系だけでなく、「ふつうの」脂肪族アルケンや、電子供与基又は求引基の結合したアルケン、さらにはアルキンやプロペランも適用範囲内の模様。

反応の位置選択性、つまり炭素-硫黄結合ができる場所を考えるとSuFEx反応剤由来の硫黄ラジカル種が発生していると思われますので、それがどうやってできるのか知りたく、後で論文をじっくり読みたいと思います。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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