Archive|Nanoniele|MakiokaFufudo

 

[読みたい論文] 原子移動ラジカル付加でジヒドロベンゾフラン骨格を作ります

Viewed: 01:17:22 in June 26, 2025

Posted: July 23, 2024

読みたい論文シリーズ− 2024年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2024年7〜9月)。

 

Keywords: atom transfer radical addition; Au; dppm; DABCO; annulation; Hashmi, A. Stephen

Synthesis of 2,3-Dihydrobenzofurans via a Photochemical Gold-Mediated Atom Transfer Radical Addition Reaction (Melder, Julian J.; Witzel, Sina; Terres, Sophia; de Bary, Philippe; Krohne, Lukas; Rudolph, Matthias; K. Hashmi, A. Stephen)
Org. Lett. 2024, 26 (27), 5664–5669.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.4c01626

 


ラジカル環化に関する論文のようです。

July 13, 2022
[読みたい論文] スチレンの末端炭素とβ–ブロモ酢酸エステルのβ炭素をくっつけます
原子移動ラジカル付加。
Org. Lett. 2022, 24 (26), 4750–4755.

 

2核金-ホスフィン錯体触媒下での、2-アリルフェノールと有機臭化物の光反応。フェノール酸素がアリル基中のアルケン炭素にくっついて5員環が形成。基質の2-アリルフェノールはアリルフェニルエーテルの熱異性化で合成されています。

光が絡むので、反応はラジカル的に進むのだろうと思いました。要旨テキストにも"atom transfer radical addition"とあります。ここで、おや?atom transferてどの原子が移動していくのかと。最初のステップはフェノールからのフェノキシラジカルの発生のはずで、酸素ラジカルがアルケン炭素を攻撃するのではとSupporting Informationに目をやると…

有機臭化物、電子求引基がついてる。だとするとこっちから電子求引基付きのアルキルラジカルが発生してアルケンの末端の方の炭素を攻撃、生じたラジカル種が臭素を取り込み、DABCO下の求核置換で5員環形成するということか。つまりatom transferするのは臭素、と。

久しぶりにGraphical Abstractでその書き方は勘弁してと思いましたが、反応の様相はわかりました。あとは反応の適用範囲ですね。電子求引基必須なのかそうでもないのか、そのあたり気になります。そんなわけで読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

あわせてどうぞ

2024年3Qの記事一覧
記事のリストです(2024年7〜9月)。

 

 

July 22, 2024
[読みたい論文] スルフィルイミンをスルフィドから合成します
基質から触媒まで硫黄だらけ。
J. Org. Chem. 2024, 89 (13), 9705–9709.

July 19, 2024
[読みたい論文] シクロプロペンを開裂させて同じ炭素にケイ素とホウ素をくっつけます
カリウムアルコキシド触媒で。
Chem. Commun. 2024, 60 (54), 6921–6924.

July 18, 2024
[読みたい論文] ギ酸ナトリウムと青色光で不飽和化合物を水素化します
遷移金属触媒は使いません。
Org. Lett. 2024, 26 (26), 5534–5538.

July 17, 2024
[読みたい論文] ブロモ酢酸メチルで不飽和化合物を臭素化します
光と空気で酸化しながら。
Org. Lett. 2024, 26 (26), 5478–5390.

July 16, 2024
[読みたい論文] ビニルシクロプロパンとジボロンから6員環のホウ酸塩を作ります
謙遜しなくてもええですよ。
Org. Lett. 2024, 26 (26), 5386–5390.

 

この日によく読まれた記事

(1) ジメチルシクロヘキサンのどの構造が安定か計算で調べました

(2) cis/trans-1,4-ジメチルシクロヘキサンのどっちの異性体が安定か計算しました

(3) [むりくり計算] アミンとホスフィンとでは立体反転のしやすさが違う?

(4) [読みたい論文] 原子移動ラジカル付加でジヒドロベンゾフラン骨格を作ります

(5) アセチルアセトン、ケト型とエノール型のどちらが安定なのか計算しました

(6) [s-cis/s-trans] アクロレインのどっちの構造が安定なのか計算しました。

(7) ブテンの4つの異性体の中でどれが一番安定か計算しました

(8) MacBook Air (2020)の発熱問題て実際どうなん: Webブラウザ毎の動画再生時にかかる負荷の違いについて

(9) [読みたい論文] N-へテロ環カルベン触媒でラジカル的三成分連結

(10) [読みたい論文] フルオロカルボン酸ナトリウムとジアリールヨードニウム塩からフルオロカルボン酸アリールを作ります

 

注目のWebコンテンツ

New 10 terms (July 23, 2024)
(Nanoniele)
https://nanoniele.blogspot.com...

トンガ火山噴火によるペケリス波が引き起こした電離圏共鳴 ~電波時計の電波観測でペケリス波による下部電離圏変動を世界初検出~
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

トンガ火山噴火によるペケリス波が引き起こした電離圏共鳴 ~電波時計の電波観測でペケリス波による下部電離圏変動を世界初検出~
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...

高性能有機ELデバイスの開発に成功 ~発光分子の性能を最大限に引き出す有機薄膜の総合設計~
(東京農工大学)
https://www.tuat.ac.jp/documen...

老化細胞による炎症促進を担う酵素「ACLY」の発見-ACLY阻害が加齢に伴う慢性炎症を改善する-
(熊本大学)
https://www.kumamoto-u.ac.jp/d...

胚移植を活用して乳牛の妊娠をより確実に~乳牛繁殖の効率化へ貢献~
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

鉄とガラスからなるグリッドシェルの形状デザイン手法の開発
(東京大学)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/in...

原発開放隅角緑内障の遺伝的リスク推定法を開発 〜個人の遺伝的リスクの予測から失明原因疾患の早期発見と予防法の構築へ!〜
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...

タンパク質凝集のコード解読 -アミノ酸配列からタンパク質分子の集まりやすさを予測する-
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/202...

トンガ火山噴火によるペケリス波が引き起こした電離圏共鳴~電波時計の電波観測でペケリス波による下部電離圏変動を世界初検出~
(千葉大学)
https://www.chiba-u.ac.jp/news...

「へき地」の少子化対策の成果を見える化 ~青森県の市区町村別の15歳未満人口割合を用いた研究報告~
(横浜市立大学)
https://www.yokohama-cu.ac.jp/...

原発開放隅角緑内障の遺伝的リスク推定法を開発-個人の遺伝的リスクの予測から失明原因疾患の早期発見と予防法の構築へ!-
(東京大学)
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/in...

高性能有機ELデバイスの開発に成功 発光分子の性能を最大限に引き出す有機薄膜の総合設計
(九州大学)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/5...

原発開放隅角緑内障の遺伝的リスク推定法を開発 個人の遺伝的リスクの予測から失明原因疾患の早期発見と予防法の構築へ!
(九州大学)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/5...

量子臨界点における境界自由度の単調性を量子情報から導出―量子エンタングルメントの三角不等式を用いた量子物質の幾何学的理解―
(京都大学)
https://www.kyoto-u.ac.jp/site...

新型コロナウイルスの増殖に重要な宿主因子の発見―新たな治療標的への期待―
(京都大学)
https://www.kyoto-u.ac.jp/site...


学問・科学ランキング 科学ランキング 自然科学ランキング 化学ランキング