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[読みたい論文] ギ酸ナトリウムと青色光で不飽和化合物を水素化します

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Posted: July 18, 2024

読みたい論文シリーズ− 2024年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2024年7〜9月)。

 

Keywords: hydrogenation; 4CzIPN; sodium formate; EWG; cyclohexanethiol; photoredox organocatalysis; Wuest, William M.

Mild Photochemical Reduction of Alkenes and Heterocycles via Thiol-Mediated Formate Activation (Brzezinski, Carter U.; LeBlanc, Andrew R.; Clerici, Madeline G.; Wuest, William M.)
Org. Lett. 2024, 26 (26), 5534–5538.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.4c01894

 


水素化に関する論文のようです。

October 20, 2023
[読みたい論文] イリジウムと青色光を使ってアルケンの端っこにアミノ基をくっつけます
アミニウムラジカルカチオン。
J. Am. Chem. Soc. 2023, 145 (40), 21738–21744.

 

4CzIPN/シクロヘキサンチオール触媒と青色光照射下での、電子不足アルケンの水素化。電子求引基を持つアルケン限定の反応ですが、水素源としてギ酸ナトリウムが使えること、白金などの遷移金属触媒が不要であることが、この論文のセールスポイントのひとつなのでしょう。

従来法である遷移金属触媒下での水素化では不飽和化合物と反応していくのは金属ヒドリド種ですが、この論文の反応のような青色光/光酸化還元触媒によよるものだとラジカル的な反応機構なのでしょう。ただ、「きつい化学種」である水素ラジカルが直接関わるとは考えにくい。シクロヘキサンチオールの関わりから、アルケン由来のラジカル中間体がチオールの水素を引き抜いて硫黄ラジカルができる、そんなメカニズムをイメージしています。詳細について本文を読んで確認したいことろです。

電子求引基が結合していることから、アルケンは光励起された触媒から1電子還元を受けるのではと。このテの還元は昔身近に見てきたので違和感はない。機構がわかれば反応の限界も見えてくる。そんなわけでいろいろ知りたいので、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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