Archive|Nanoniele|MakiokaFufudo

 

[読みたい論文] ホウ素と硫黄が参加する非芳香族π共役系

Viewed: 21:48:05 in June 25, 2025

Posted: September 12, 2024

読みたい論文シリーズ− 2024年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2024年7〜9月)。

 

Keywords: B; donor-acceptor; TADF; Adachi, Yohei; Ohshita, Joji

Photophysical properties of donor–acceptor antiaromatic organoboron compounds based on dithienodiborinines (Adachi, Yohei; Hasegawa, Takumi; Ohshita, Joji)
Chem. Lett. 2024, 53 (8), upae161
URL (Doi): 10.1093/chemle/upae161

 


π共役系に関する論文のようです。

September 26, 2022
[読みたい論文] 何かと安定なオリゴインを作りました
付けた外したを繰り返し。
Angew. Chem. Int. Ed. 2022, 61 (39), e202208502.

 

ベンゼン環の1,4–位の炭素原子がホウ素原子に置き換わり、2,3–位と5,6–位の炭素原子がそれぞれチオフェン環の構成原子であるπ共役化合物の合成と物性。2つのホウ素原子にはo,o′–ジメチル–p–ジメチルアミノフェニル基が結合しています。

Chem. Lett.を購読していない私がWebサイトから得られる情報はタイトルとGraphical Abstractと要旨テキスト。Supporting Informationがあれば合成法や分子構造などの情報を得ることができるのですが、このサイトだと、どこにあるのだろう…。

というわけでTOCだけからの判断と妄想になりますが、分子の中心部分(6員環のところ)が電子不足、外側の5員環のところが電子豊富なπ共役系、ということなのでしょう。12員環のπ電子数は12(=反芳香族性)でいいでしょうか。ホウ素原子に結合しているベンゼン環もジメチルアミノ基のおかげで電子豊富なのですが、メチル基が立体的に邪魔なために、12員環の平面に対しては下の構造(ねじくれっぷりを大袈裟にモデリングしました)のようにベンゼン環が「立っている」と想像します。


気になるのは合成法と光物性。合成法については、2,3–ジブロモ–5–メチルチオフェンとジハロアリールボロンと、n–かt–かわからんけどブチルリチウムと想像します。いきなりのジリチオ化だと位置異性体との混合物になりそうなので、段階的にアリールボリル基をくっつけていくといった感じでしょうか。

光物性については、熱活性化型遅延蛍光(TADF)が観測されると要旨にあり、ホウ素原子に結合しているアリール基が関わっていると妄想しています。

そんなわけで、妄想通りなのか確かめたくて、読みたい論文に追加しました。

関連の情報がないかと研究グループのWebサイト見たけどまだだった(執筆時)。

もしかしてメチル基ない版で超分(自粛)

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

あわせてどうぞ

2024年3Qの記事一覧
記事のリストです(2024年7〜9月)。

 

 

September 11, 2024
[読みたい論文] ニトロソカルバミン酸エステルとボロン酸で炭素-炭素結合形成
ホウ素もくっつく。
Angew. Chem. Int. Ed. 2024, 63 (37), e202408432.

September 10, 2024
[読みたい論文] 希土類ルイス酸とチオ尿素でシクロプロパン環開裂
ラクタム骨格が出来上がる。
Chem. Eur. J. 2024, 30 (48), e202401332.

September 9, 2024
[読みたい論文] α,β–不飽和カルボン酸のクロスカップリングでエノンを作ります
2-ピリジルエステル経由で。
Org. Lett. 2024, 26 (34), 7217–7221.

September 6, 2024
[読みたい論文] エステルエノラートが求核剤の位置も立体も選択的な炭酸アリル化合物の反応
脱離基の根元へのどストレート。
J. Am. Chem. Soc. 2024, 146 (34), 23674–23679.

September 5, 2024
[読みたい論文] 窒素とリンの2原子が配位できそうな、リンイリド型配位子
パラジウムと組み合わせて室温で塩化アリールを活性化。
Angew. Chem. Int. Ed. 2024, 63 (36), e202408947.

 

この日によく読まれた記事

(1) 読みたい論文シリーズ− 2024年3Q

(2) [読みたい論文] ホウ素と硫黄が参加する非芳香族π共役系

(3) [水素水] H6O分子の構造を最適化したらこうなった

(4) 読みたい論文シリーズ− 2024年2Q

(5) 読みたい論文シリーズ− 2024年1Q

(6) ブテンの4つの異性体の中でどれが一番安定か計算しました

(7) [MacBook Pro] バッテリーを交換したが充電できない(2)

(8) [むりくり計算] アミンとホスフィンとでは立体反転のしやすさが違う?

(9) [水素水] H14O分子の構造最適化をトライした

(10) H3O4なるものを見かけたので軌道を可視化したかった(2)

 

注目のWebコンテンツ

New 10 terms (September 12, 2024)
(Nanoniele)
https://nanoniele.blogspot.com...

黄砂が日本に来なかった3000年前の気候イベントの発見 -富士山・本栖湖底に残された過去8000年の記録から気候変動を復元-
(産業技術総合研究所)
https://www.aist.go.jp/aist_j/...

最も単純な「原子」ポジトロニウムをレーザー光によって1000万分の1秒で極低温にすることに成功 -反粒子を含む原子の精密科学によって物理学の謎にせまる大きな第一歩-
(産業技術総合研究所)
https://www.aist.go.jp/aist_j/...

環境要因が長期栽培作物の収穫量にどのように寄与しているのか、統計モデルを使用し定量化に成功
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/202...

未知の水“同素不混和水”の圧力に対する 2 種類の応答を発見 ─ 水/氷間の相転移過程解明に一歩前進 ─
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...

独自のメタサーフェスでテラヘルツ光渦を生成-メタサーフェスのテラヘルツ光源アレーへの搭載指針の 構築の進捗を国際会議の基調講演(Keynote Speech)で発表-
(弘前大学)
https://www.hirosaki-u.ac.jp/w...

『白神山地の冬季ニホンジカ・モニタリングに向けた 指標植物の特定』について
(弘前大学)
https://www.hirosaki-u.ac.jp/w...

未知の水"同素不混和水"の圧力に対する2種類の応答を発見――水/氷間の相転移過程解明に一歩前進――
(東京大学)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/in...

肝細胞癌に対する特定の治療法において、腫瘍マーカーの変化を測定することで治療効果を判定できることを発見
(広島大学)
https://www.hiroshima-u.ac.jp/...

黄砂が日本に来なかった3000年前の気候イベントの発見 ―富士山・本栖湖底に残された過去8000年の記録から気候変動を復元―
(東京大学)
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp...

未知の水「同素不混和水」の圧力に対する2種類の応答を発見 ─ 水/氷間の相転移過程解明に一歩前進 ─
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...

新規分析法により含水有機物試料の3次元可視化を実現しました! ~ナノからマイクロの領域における分子の存在状態を3次元で観察できます~
(名古屋大学)
https://www.nagoya-u.ac.jp/res...

有機太陽電池の性能向上に成功! ―有機半導体の励起子束縛エネルギー低減に向けた新指針―
(神戸大学)
https://www.kobe-u.ac.jp/ja/ne...

ゲノム解析で解き明かすソメイヨシノのルーツに関する論文が発表されました
(かずさDNA研究所)
https://www.kazusa.or.jp/news/...

CO2から炭素数3の化合物を合成する分子触媒を開発 ~CO2の高エネルギー物質への再資源化に向けた触媒設計に貢献~
(SPring-8)
http://www.spring8.or.jp/ja/ne...

CO2 から炭素数 3 の化合物を合成する分子触媒を開発 ~CO2 の高エネルギー物質への再資源化に向けた触媒設計に貢献~
(豊田中央研究所)
https://www.tytlabs.co.jp/asse...

最も単純な「原子」ポジトロニウムをレーザー光によって1000万分の1秒で極低温にすることに成功 反粒子を含む原子の精密科学によって物理学の謎にせまる大きな第一歩
(高エネルギー加速器研究機構)
https://www.kek.jp/wp-content/...

iPS細胞由来運動ニューロン ✕ ゲノムの統合解析により筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療メカニズムを探索-運動ニューロンにおけるコレステロール合成亢進がALS病態の鍵-
(慶應義塾大学)
https://www.keio.ac.jp/ja/pres...

鎮痛薬使用に伴うがん患者の便秘予防に対するナルデメジンの有効性を実証
(富山大学)
https://www.u-toyama.ac.jp/wp/...

未知の水“同素不混和水”の圧力に対する 2 種類の応答を発見 ─ 水/氷間の相転移過程解明に一歩前進 ─
(鳥取大学)
https://www.tottori-u.ac.jp/ne...

熱流が重力に逆らって液体を浮上させる現象をシミュレーションで発見 水が水蒸気の上に浮かび上がる?液体浮遊の新たなメカニズムの可能性
(茨城大学)
https://www.ibaraki.ac.jp/news...

最も単純な「原子」ポジトロニウムをレーザー光によって1000万分の1秒で極低温にすることに成功 ―反粒子を含む原子の精密科学によって物理学の謎にせまる大きな第一歩―
(東京大学)
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/hu...

光合成を調節する光スイッチの動作するしくみを解明
(金沢大学)
https://www.kanazawa-u.ac.jp/w...

リンチ症候群患者の大腸がんと腸内細菌の関連性の解明 腫瘍形成の理解に基づく新たな予防と治療の可能性
(東京工業大学)
https://www.titech.ac.jp/news/...

月面探査船内でのCO₂分離・除去のための膜分離装置の設計に成功! 九州大学×株式会社JCCL×JAXA×東京工業大学
(九州大学)
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/...

下水中の新型コロナウイルスPCR分析における塩基配列変異の影響を解明 ―より正しいウイルス濃度を得るためのデータ解析法を提案―
(高知大学)
http://www.kochi-u.ac.jp/infor...

磁場下で電荷を持たない新粒子を観測 ―熱測定により、電荷中性の新粒子の量子化現象を発見―
(東京大学)
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp...


学問・科学ランキング 科学ランキング 自然科学ランキング 化学ランキング