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[読みたい論文] イリジウム触媒でアセトアルデヒドのα位をアリル化します

Viewed: 13:18:44 in July 3, 2025

Posted: February 18, 2020

Enantioselective Iridium-Catalyzed α-Allylation with Aqueous Solutions of Acetaldehyde (Sandmeier, Tobias; Carreira, Erick M.)
Org. Lett. 2020, 22 (3), 1135−1138.

Keywords: Ir; cod; MeCHO; ee; DCE; 読みたい論文シリーズ; Carreira, Erick M.; 有機化学; ブログ


イリジウム触媒下でのアセトアルデヒドの不斉アリル化に関する論文のようです。アセトアルデヒドのカルボニル基、ではなく、α炭素が反応します。形式的にはアセトアルデヒドのエノラートとアリル求核剤の反応ですが、詳細な反応機構を知りたくて、読みたい論文に追加しました。

この論文の反応、不斉反応で、ビナフチル骨格を持つ不斉配位子とプロリン由来の不斉補助剤の組み合わせにより、高いエナンチオ選択性を実現しています。生成物の光学純度は、水素化ホウ素ナトリウムでアルコールに還元した後、HPLCにて確認しているようです。

ところで基質のアリリックアルコール、この化合物にも不斉中心があるわけで、どちらかの鏡像体だけが反応していく「速度論的光学分割」の可能性があるんじゃないかと、Supporting Informationに目を通しました。んが、アリリックアルコールが全部反応することを想定した実験操作が書かれており、その可能性はない模様。つまり、基質の立体は反応に際しては重要ではないということでしょうか(鏡像体によって多少の速度差はあるかもしれませんが)。

通ろで、要旨テキストにはheliannuols C/EとheliespironesA/C云々がと書かれていますが、Supporting Information中ではこれらの化合物の合成に関する記述が見つからず、そこまで迫っているのか…。気になります。


 

有機化学初心者向けコメント

☆アセトアルデヒド

体内のエタノールがアルコール脱水素酵素によって酸化されて生成するのがアセトアルデヒド。
体内で生成したアセトアルデヒドの代謝がうまくいかないと、二日酔いの原因になることが。
工業的には、エチレン(CH2=CH2)と酸素のワッカー反応で製造します。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

計算終わりました

 

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[読みたい論文] イリジウム触媒でアセトアルデヒドのα位をアリル化します
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Org. Lett. 2020, 22 (3), 1135−1138.

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