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[読みたい論文] アルデヒドとチオアミドのジアステレオ&エナンチオ選択的なアルドール型反応

Viewed: 07:28:09 in July 11, 2025

Posted: February 20, 2020

Z-Enolate Geometry in the Thioamide Aldol Reaction Illuminated by the 7-Azaindoline Auxiliary (Pluta, Roman; Li, Zhao; Kumagai, Naoya; Shibasaki, Masakatsu)
Org. Lett. 2020, 22 (3), 791−794.

Keywords: Cu; de; ee; 読みたい論文シリーズ; Shibasaki, Masakatsu; 有機化学; ブログ


銅触媒下での、アルデヒドとチオアミドの不斉アルドール型縮合反応について報告している論文のようです。

アルドール縮合、エノラートイオンのアルデヒドへの求核付加による炭素–炭素結合形成を経るの教科書反応ですが、基質の種類によっては複数のジアステレオマーやエナンチオマーが生成するケースがあります。エナンチオマー生成に関しては、不斉配位子、この論文では下のようなもの(だと思います、略号しか見つからなかったので多分これだろうと)を使ってどちらかが選択的に生成するようにコントロールするのが常套手段です。


一方のジアステレオマー、これについてはいくつかの手法があります。この論文に関しては、チオアミドと塩基によって発生するチオエノラート、 Graphical Abstractにある真ん中のやつですが、こいつの幾何異性(二重結合に対してR2とSが同じ方向又は反対の方向)を制御することが、反応の選択性に重要であるわけです。んで、Z体のをきっちり作るのに、アミドの窒素周りがアザインドリンであると好都合である、ということなのでしょう。


このようにZ体のチオエノラートをうまく発生できてい多としても、アルデヒドとの反応で立体制御ができていなければsyn体の生成物が選択的は得られないわけで、これら2分子の反応でどのような遷移状態を経由させるか、これも重要。遷移状態については、銅原子を含めた環状のものだったり、炭素=炭素–炭素=酸素各原子が直線上に並ぶものだったりと、色々あるのですが、著者らがどれをチョイスしているのか、とても気になるので、読みたい論文に追加しました。

 

有機化学初心者向けコメント

☆チオエノラート (thioenolate)

カタカナはドイツ語ベースです。
呪文のような用語ですが、分解するとthio/en/ol/ate。
en (ene)はC=C構造、olはOH基で、enolはC=C-OH構造。
thioは硫黄、thioenolはC=C–SH構造。
ateはアニオン(陰イオン)を表します。
つまりチオエノラートは、C=C–S構造を表す、というわけです。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

計算終わりました

 

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