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Keywords: benzene; aniline; toluene; nitrobenzene; fluorobenzene; chlorobenzene; bromobenzene; むりくり計算; 有機化学; ブログ
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有機化学を理解する上で基礎的で重要なことではあるのですが、文字や構造式だけでは、「そうなんだ」とそのまま理解or記憶するしかないのが辛いところ(最近ではきちんと図解されているかもしれませんが)。
そんなわけで、教科書の記述が正しいのかどうかを確かめるために、1置換ベンゼンのDFT計算をして、分子の電子密度を可視化しました。クラシックなB3LYP/6-31G(d)でです。計算ソフトウェアはGAMESS。
図の青いところが電子密度の高い部分、赤いところが低い部分です。緑色はその中間。ラフな計算なので若干対称性が崩れ気味です。ご容赦を。
アニリン(X=NH2)分子、教科書ではアミノ基(NH2)の非共有電子対の電子が芳香環のπ軌道に流れ込んで芳香環の電子密度が高くなるとかよく書かれていますが、計算結果からも芳香環の部分がベンゼン分子のものよりも青く、電子密度がより高いことがわかります。
トルエン(X=CH3)分子の場合、アミノ基ほどではないものの、メチル基(H3)の電子供与能のために芳香環の電子密度がベンゼンのものよりも若干高め。
一方強い電子求引能あるニトロ基(NO2)がベンゼン環に結合したニトロベンゼン(X=NO2)分子の場合には、芳香環のところが赤く、電子密度が低くなっています。
ハロゲン原子がベンゼン環に結合したハロベンゼン分子、有機化学の教科書ではハロゲンの電子求引能のためにベンゼン環の電子密度が低くなると書かれています。下の図の通り、確かにベンゼン環はベンゼン分子のものよりも青色が少なく赤色多めで、電子密度がより低くなっていることがわかります。求電子置換の反応性がベンゼンよりも低いのも納得です。
というわけで、ベンゼン環の電子密度云々は 試した計算結果と教科書の記述に矛盾はなさそうです。