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[読みたい論文] チオールで外れるアミン保護基

Viewed: 21:42:31 in June 25, 2025

Posted: March 10, 2023

Keywords: fXs; nucleophilic aromatic substitution; dodecanethiol; DBU; Yokoshima, Satoshi

Fluorinated 2,6-Xylenesulfonyl Group: A Protective Group for Amines (Katayama, Yuki; Watanabe, Kenta; Nishiyama, Yoshitake; Yokoshima, Satoshi)
Org. Lett. 2023, 25 (8), 1326–1330.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.3c00299

 


アミン保護基に関する論文のようです。

October 24, 2022
[読みたい論文] アジド基がくっついている炭素上のスルホ基をチオ基に置き換えます
炭素窒素窒素窒素硫黄。
Org. Lett. 2022, 24 (40), 7361–7365.

 

アミンの保護基にはいろいろありますが、スルホニル基の代表といえばp–トルエンスルホニル基(トシル基,Ts)。トシル基で保護されたアミン(スルホン酸アミド)は個人的にもよく扱いましたが結構頑丈で、脱保護はしんどかった記憶が。安定だけど外しやすい、そんなスルホン酸アミド系保護基があればと開発されたのが、この論文の物であると勝手に想像しています。

この論文の保護基、fXs基、ベンゼン環の2つのオルト位の炭素にトリフルオロメチル基が結合した芳香環を含むスルホニル基。スルホニル基を含めれば3つの電子吸引基がベンゼン環に結合しているのが特徴。この保護基が結合したスルホン酸アミドをドデカンチオールで処理するとアミンが放出されるのだとか。

論文の反応ではドデカンチオールが使われているの、おそらくこれに限定されず他のチオールでもいいのでしょう。ただ、低分子量のチオールはとにかく臭い。匂わないチオールとして、ドデカンチオールがと思っていますが、実際のところは本文で確認したいところ。

気になるのは脱保護のメカニズム。Graphical Abstractにあるようにアリールスルフィドがアミンと共に生成しており、芳香族求核置換が起きている可能性があります。そうであれば一般的なスルホン酸アミドの脱保護とは異なる機構ということになるので、詳細を知りたく、読みたい論文に追加しました。

芳香族求核置換で脱保護というコンセプトでいろいろ展開できそう。

 

読みたい論文シリーズ− 2023年1Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2023年1〜3月)。

2023年1Qの記事一覧
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この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

March 9, 2023
[読みたい論文] 銅触媒とビニルシランでカルボン酸アミドのビニル化
その塩素どっから来た。
Org. Lett. 2023, 25 (8), 235–239.

March 8, 2023
[読みたい論文] パラジウム触媒でアルキンの重合
気になる価数変化。
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March 7, 2023
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March 6, 2023
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Jørgensen–Hayashi触媒。
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March 3, 2023
[読みたい論文] ベンジル炭素-水素結合を切断して窒素原子をくっつけます
求核置換を回避。
J. Am. Chem. Soc. 2023, 145 (7), 3861–3868.

 

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