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[読みたい論文] アルキニルシランと水からα,β–不飽和ケトンができます

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Posted: July 24, 2024

読みたい論文シリーズ− 2024年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2024年7〜9月)。

 

Keywords: carbon–carbon bond formation; Pt; Miura, Katsukiyo

Platinum-Catalyzed Hydrative Dimerization of Alkynylsilanes to α,β-Unsaturated Ketones (Kikuchi-Igarashi, Kasumi; Tahara, Yuki; Hirano, Haruna; Ambe, Chinatsu; Kinoshita, Hidenori; Miura, Katsukiyo)
Org. Lett. 2024, 26 (27), 5689–5694.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.4c01735

 


炭素-炭素結合形成に関する論文のようです。

[読みたい論文] ベンゾチオフェン: オキシドになるもならぬも「量」次第
DIBALHに恐怖したあの頃。
Org. Lett. 2020, 22 (8), 3123−3127.

 

白金触媒下でのアルキニルシランと水の反応。アルキニルシランが2量化したα,β–不飽和ケトンが生成します。シリル基が綺麗に外れてしまっています。Graphical Abstractにあるように、白金単独の触媒系で反応が行われている例の他、銅塩とリチウム塩を添加した系でのケースも。両金属塩の添加にどのような効果があるのかは本文を読まないとわからなそうですが、添加の有無で収率に差が生じることは間違いなさそうです。

この論文の反応、狙ってできたものなのか、別の目的で検討していてこの現象が認められたのか、少し気になります。個人的には後者かなと思いました。アルキニルシランの水和からアシルシランを得る反応かなと(たぶん違う)。溶媒にアセトンが使われているの、反応に関わったりしないのかと少し心配にはなりますが、多分大丈夫なのでしょう。

反応機構、ちょっと想像できません。水がどの段階で絡んでくるのか。要旨テキストにはアシル白金中間体とあります。これはあり得なくもないなとSupporting Informationを見ていくと、単離された白金錯体の構造がありましたって…え?


確かに白金アシル錯体ではあるけれども、カルベン構造も。これ、1,3–ジケトンの2番目の炭素が白金になってる構造ですよね。なんかすごい。これ見てもしかしてと思いました。アルキンの水和の段階でBrook転位起きてるかもと。

そんなわけで著者さん達が提唱するメカニズムを知りたく、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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