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[読みたい論文] チオ尿素を硫黄源とするチオエステルの合成

Viewed: 21:54:03 in June 25, 2025

Posted: September 19, 2024

読みたい論文シリーズ− 2024年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2024年7〜9月)。

 

Keywords: DIPEA; DMSO; three-component coupling; S; thiourea; Melchiorre, Paolo

Photochemical Synthesis of Thioesters from Aryl Halides and Carboxylic Acids (Wu, Shuo; Melchiorre, Paolo)
Angew. Chem. Int. Ed. 2024, 63 (37), e202407520
URL (Doi): 10.1002/anie.202407520

 


光カップリングに関する論文のようです。

March 11, 2022
[読みたい論文] 光照射下で1,7–ジカルボニル化合物をシクロブタノールと不飽和アルデヒドから作ります
エナンチオ選択的に。
Org. Lett. 2022, 24 (8), 1695–1699.

 

N,N–ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)存在下及び(ピーク波長ベースで言えば)紫光照射下での、チオ尿素とカルボン酸とハロゲン化アリールの反応。アリールチオエステルが生成物。チオエステルの硫黄源はチオ尿素から溶媒のジメチルスルホキシドからではない…はず。

反応の過程でどの化合物が光励起されるのかが気になりました。チオ尿素のチオカルボニル基かカルボン酸のカルボキシル基かハロゲン化アリールのアリール基、もしくはハロ基か。Graphical Abstractにはチオ尿素が光励起されて還元力を持ちようになる旨描かれています。その後ハロゲン化アリールと反応してS–アリールイミニウム塩になってカルボン酸という流れのようです。

カルボン酸のどっちの酸素原子が生成物のカルボニル酸素になるのでしょうか。C=OのなのかOHのなのかなのですが、そもそもカルボキシル基の2つの酸素原子は区別ができませんから、考えても仕方ないのかもしれませんが。あと、DIPEA、こいつの役割は?単純に塩基なのか、光増感剤としてもなのか。そしてチオ尿素、簡単に光励起されてビラジカル様になれるのかな、確かにカルボニル基とは違ってπ共役が難しのですが。

そんなわけで反応機構の諸々を知りたく、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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