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[読みたい論文] ベンゾな含ホウ素3員環シクロプロペンと窒素-窒素二重結合の環拡大

Viewed: 18:28:04 in June 25, 2025

Posted: September 20, 2024

読みたい論文シリーズ− 2024年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2024年7〜9月)。

 

Keywords: benzoborirene; ring expansion; cycloaddition; PTAD; bptz; Trip; BN-aromatics; Bettinger, Holger F.

Formal (2+2) ring expansion prevails over (4+2) cycloaddition of a kinetically stabilized benzoborirene with reactive cycloaddends (Sindlinger, Marvin; Biebl, Sonja; Ströbele, Markus; Bettinger, Holger F.)
Chem. Commun. 2024, 60 (73), 9986–9989
URL (Doi): 10.1039/D4CC02888K

 


BN多環化合物の化学に関する論文のようです。

July 25, 2024
[読みたい論文] アザボラほぼベンゼンの異性体の歪みエネルギーをルイス酸で解放します
エネルギー貯蔵に。
Angew. Chem. Int. Ed. 2024, 63 (30), e202405818.

 

ベンゾボリレン、といきなり書いてもわかる人にしかわかりませんが、ベンゼン環の2つの隣接する炭素がホウ素原子に結合した構造の化合物と、窒素-窒素二重結合を持つ1,2,4–トリアゾリン–3,5–ジオン化合物(PTAD、こいつも構造式を見た方が早い)の反応。芳香族化合物とPTADの反応では[4+2]環化付加が起きて芳香環が壊れるケースもあるのですが、この論文の反応では上の反応スキームのように挿入反応を経て5員環構造ができます。

Graphical Abstractに描かれたPTADと生成物、窒素原子が炭素原子になっているので要注意です。正しくはこの記事の反応スキームの通り。

3員環が5員環になる反応で、形式的とは言えなんでまた[2+2]環化付加なる言葉が論文のタイトルにあるのか、気になって論文をざっくりと見ました。どうやら反応の過程で4員環構造の中間体が形成されているようです。PTADの窒素原子が段階的に芳香環の炭素原子を攻撃している模様。3員環構造へのいきなりの[2+2]環化付加ではないのですね、シクロプロパンの炭素-炭素結合とかが二重結合のと類似の反応挙動を示したりもするのですが。

そんなわけで反応機構に関する著者さんたちのコメントを知りたいので、後で本文をじっくり読もうと思います。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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