Archive|Nanoniele|MakiokaFufudo

 

[読みたい論文] Ni/Ir触媒下でベンジル炭素と脂肪族アルデヒドのカルボニル炭素が結合します

Viewed: 07:08:56 in July 7, 2025

Posted: February 21, 2020

Dehydrogenative Coupling of Benzylic and Aldehydic C–H Bonds (Kawasaki, Tairin; Ishida, Naoki; Murakami, Masahiro)
J. Am. Chem. Soc. 2020, 142 (7), 3366−3370.

Keywords: Ir; Ni; dtbbpy; TBAB; TEMPO; 読みたい論文シリーズ; Murakami, Masahiro; 有機化学; ブログ


Ni/Ir触媒による、ベンジル炭素と脂肪族アルデヒドのカルボニル炭素の脱水素カップリングに関する論文のようです。青色光の照射下で進行します。

イリジウム触媒はこんな構造。


この反応、脱水素カップリングですので、反応により脱離する2つの水素原子を酸化剤で補足される、水素分子が生じるのどちらかであるはずで、その辺りどうなっているのかなと思ったのが、読みたい論文に追加に至る「入口」でした。確かにGraphical Abstractからは水素分子の生成とありますが、実際には確認がなされてないにも関わらずH2と書いてある他の著者の論文も過去に見られ、ここはしっかり見とかないととSupporting Informationを読みました。確かにきっちりと書かれています、よかった。

…という不安が解消されたとか私のどうでもいい話はさておき、この反応、捕捉実験からラジカル機構で進んでいることは容易に想像でき、どのようなラジカルサイクルを想定しているのか、興味が引かれます。ラジカル機構であるためか、反応の適用範囲も納得のいくもので、芳香環上の置換基とベンジルラジカル発生の容易さの関係、アルデヒドのチョイス、などなど、本文を読む前から頷けるものがあります。

有機ラジカル反応であることが容易に想像できる一方、有機ラジカル発生に至るIr/Ni触媒の挙動については知識不足のためか本文を読まなければどうにもなりません。使用しているニッケル錯体のアニオン種が何かしていそうなことはSupporting Informationからわかりますが…。

 

有機化学初心者向けコメント

☆ラジカル (radical)

不対電子を持つ原子や分子。不対電子を持つイオンの場合はラジカルイオンとも。
日本語では遊離基。
不対電子を持つので、磁性を潜在的に持つ。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

計算終わりました

 

あわせてどうぞ

読みたい論文シリーズ− 2020年1Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2020年1〜3月)。

2020年1Qの記事一覧 2020年1Q
お仕事関係の記事のリストです(2020年1〜3月)。

 

[読みたい論文] アルデヒドとチオアミドのジアステレオ&エナンチオ選択的なアルドール型反応
エノラートの幾何異性制御。
Org. Lett. 2020, 22 (3), 791−794.

[読みたい論文] 銅触媒下で二酸化炭素と水素からギ酸を合成します
DBUで落とすのかと思ってました。
Chem. Lett. 2020, 49 (3), 252−253.

[読みたい論文] イリジウム触媒でアセトアルデヒドのα位をアリル化します
不斉反応です。
Org. Lett. 2020, 22 (3), 1135−1138.

[読みたい論文] 1,3–ジエン経由でアリールボロン酸と反応させてアリルアレーンを作ります
デヒドロヒドロアリール化?。
Org. Lett. 2020, 22 (3), 1124−1129.

[読みたい論文] ゲルマニウム–ホウ素二重結合を持つ化合物
タイトルそのまんまです。
Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59 (8), 3147−3150.

[読みたい論文] 酸の存在下でベンゼン環-ベンジル炭素の結合が切断されます
アリルベンゼン。
Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59 (8), 3063−3068.

February 12, 2020
[読みたい論文] ビニルアジドとヨードニウム塩からビニルカチオンを発生させます
Koser試薬なのを思い出しました。
Org. Lett. 2020, 22 (3), 768−771.

[読みたい論文] ジアゾアリル化合物からアリルボランホスフィン錯体を合成します
B–H結合への挿入反応。
Org. Lett. 2020, 22 (3), 1091−1095.

[読みたい論文] 水素ガスも金属触媒も要らない脱ベンジル反応
酸化的脱保護。
Chem. Lett. 2020, 49 (2), 191−194.

[読みたい論文] 有機リン触媒でアルケンを水素還元します
フマル酸とマレイン酸の覚え方。
Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59 (7), 2760−2763.

 

注目のWebコンテンツ

パラジウム価格上昇 金急伸に追随、需給逼迫継続で下値堅く
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/space...

主要地区・洋紙/12月の国内販売高、13.2%減
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

白金と同等性能の触媒、東大が開発 「亜鉛空気二次電池」実現へ
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

「はやぶさ2」イオンエンジン、1回目の運転完了 JAXA
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

銀河宇宙線、タイタンの大気に影響 複雑な分子生成
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

トチュウ果皮から新素材 九大など抽出装置、コスト8分の1で生産10倍
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

塩ビ輸出 好環境続く
(化学工業日報)
https://www.chemicaldaily.co.j...

核廃棄物を
(村井君のブログ)
http://murai-kun.cocolog-nifty...

お前はもう死んでいる:不安定な試薬たち|第4回「有機合成実験テクニック」(リケラボコラボレーション)
(Chem-Station)
https://www.chem-station.com/b...

2020年02月前半 kwh_rd100の注目論文BEST3
(計算化学.com)
https://computational-chemistr...

【健康料理】研究開発職が料理をすべき理由3選
(とある三十路研究職の書庫)
http://www.kohnomasaru.com/arc...

セサミンの抗炎症効果に関わる分子的作用機構を世界で初めて解明
(慶應義塾大学)
https://www.keio.ac.jp/ja/pres...

肝がんに対する遺伝子治療法を開発しました -肝がん細胞に毒素遺伝子を発現し、治療効果と安全性を明らかに-
(新潟大学)
https://www.niigata-u.ac.jp/ne...

世界で初めて実用レベル(3umサイズの画素)IRマルチスペクトルセンサーを実現
(奈良先端科学技術大学院大学)
http://www.naist.jp/pressrelea...


学問・科学ランキング 科学ランキング 自然科学ランキング 化学ランキング