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[読みたい論文] 教科書反応とは選択性が違ってしかも不斉なDiels–Alder反応

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Posted: September 13, 2022

Keywords: organocatalysis; Diels–Alder reaction; annulation; asymmetric synthesis; ee; BINOL; Hatano, Manabu; Ishihara, Kazuaki; 有機化学; ブログ

Multiselective Diels–Alder Reaction of α-Arylacroleins Catalyzed by Boron Tribromide-Assisted Chiral Phosphoric Acids (Matsui, Kai; Toh, Kohei; Hatano, Manabu; Ishihara, Kazuaki)
Org. Lett. 2022, 24 (35), 6483–6488.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.2c02747

 


立体選択的なDiels–Alder反応に関する論文のようです。

[読みたい論文] ルイス塩基を使って1次元オリゴヨウ素を作ります
雷の呼吸。
Org. Lett. 2020, 22 (12), 4888−4892.

 

有機化学の教科書では、シクロペンタジエンとα,β–不飽和カルボニル化合物のDiels–Alder反応ではendo–体の付加体が優先して生成するとよく記述されています。[4+2]環化付加の際にカルボニル基とシクロペンタジエンの間に相互作用があるからとのことですが、私自身は懐疑的で、試しに遷移状態を計算てみたら相互作用ないん違うんかいという結果を得たことも。

この論文のシクロペンタジエンとα,β–不飽和アルデヒドのDiels–Alder型反応でも、exo–付加体が選択的に生成するとのことで、何がどうなってそういう選択制になるのか気になり、読みたい論文に追加した次第です。


Diels–Alder型反応、ルイス酸やBrønsted酸触媒下で加速することが知られています。論文の反応ではでっかい有機基がくっついたリン酸部分エステル(でいいのかな)と3臭化ホウ素の組み合わせからなる触媒が採用されており、有機基にキラリティ(軸不斉)があることを利用してエナンチオ選択性が実現しています。一方のexo–選択性については有機基の効果っぽい旨が要旨テキストに書かれているようではありますが、具体的なところは本文を読んで確認したいところ。

そういえば、以前どこかで見かけたexo–選択的な反応も、ホウ素触媒が使われていたような。

著者さんたちがここのサイトを見てexo–選択的なDiels–Alder反応を開拓したということは…ないと思います。

September 13, 2022
マタタビの実もいろいろ
サルナシとは違うようです。

 

 

読みたい論文シリーズ− 2022年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2022年7〜9月)。

2022年3Qの記事一覧
お仕事関係の記事のリストです(2022年7〜9月)。

 

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

計算終わりました

Chemical formula: C5H9N2
 

September 12, 2022
[読みたい論文] アルコールとかフェノールとかをうまいこと選んでシリル化します
でっかいシリル基。
Chem. Lett. 2022, 51 (9), 953–956.

September 9, 2022
[読みたい論文] メタノールを水素源にしてα,β–不飽和ケトンを還元します
イリジウム触媒と塩基で。
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September 8, 2022
[読みたい論文] エノラートが芳香環を求核的に攻撃します
外れるフルオロ基。
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September 7, 2022
[読みたい論文] アミンとカルボニル化合物とメタノールをくっつけてメチルアミンを作ります
酸素はどこへ消えた?。
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September 6, 2022
[読みたい論文] ケイ素-炭素二重結合の炭素周りがミニマムな化合物を作ります
ケイ素周りでガッチリ。
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