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[読みたい論文] 位置選択的なヨードニウム塩形成を経てベンザインをうまいこと発生させます

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Posted: September 13, 2023

読みたい論文シリーズ− 2023年3Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2023年7〜9月)。

 

Keywords: I; benzyne; MTBE; LiHMDS; tBuONa; annulation; BF3•OEt2; Stuart, David R.

Oxidative Cycloaddition Reactions of Arylboron Reagents via a One-pot Formal Dehydroboration Sequence (Karandikar, Shubhendu S.; Metze, Bryan E.; Roberts, Riley A.; Stuart, David R.)
Org. Lett. 2023, 25 (34), 6374–6379.
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.3c02379

 


アライン発生法に関する論文のようです。

April 27, 2023
[読みたい論文] 超原子価ヨウ素でアレーンとピリジンからピリジニウム塩を合成します
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Org. Lett. 2023, 25 (14), 2548–2553.

 

アリールボロン酸塩とアリールヨードニウム塩からジアリールヨードニウム塩を作り、これを塩基で処理することによりアラインを発生させるというもの。適当な補足剤を共存させておけば環化付加体ができる模様。

ジアリールヨードニウム塩からアラインを発生させる方法はこれまでにも報告されており、ポスドク時代に実験台の隣のスペースのところで学生さんがその研究をしてたのを憶えています(この記事を書いているちょっと前に試薬会社さんが反応例をWebに載せてました)。なのでそれほど目新しい反応では無いとは思いますが、アリールボロン酸塩を使って特定の場所のアリール炭素とヨウ素の間に結合を作ることができるのは合成化学的にも意義がある。そこにこの論文のセールスポイントがあるのでしょう。

この論文ではアラインはジアリールヨードニウム塩のベンゼン環の水素を塩基で引き抜いて発生させています。「ジアリール」なのでどちらかのアリール基からアラインを発生できるよう、ベンゼン環のオルト位がメチル化されたアリールヨードニウム塩が使われています。それでももう片方のアリール基にはオルト炭素が2つあるわけで、そこの水素引き抜きの選択性がどうなっているのか、気になるところではあります。もしかしたらジアリールヨードニウム塩由来のアリール基の嵩高さがうまいことやてくれているのかもしれません。

そんなわけで、選択性に関する反応の制御がうまくいっているのか知りたく、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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