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[駄文] 最近よく見かけるイリジウム錯体を無理くりモデリングした

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Posted: February 11, 2025

Keywords: [Ir(dFCF3ppy)2(dtbbpy)]PF6; MLCT; electron transfer; むりくり計算


「読みたい論文」でも紹介していますが、最近(2025年)の有機反応の研究の流行のひとつが光酸化還元触媒を介したカップリング。光、中でも青色の光を使うものをよく見かけます。青色LEDが普及したのもあるのでしょうね。青色光によって励起された光酸化還元触媒と基質の間の電子のやり取りが、お決まりの反応の様式というか機構です。

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そんな光酸化還元触媒、中でも報告例の中でよく見かけるのが上の構造式のイリジウム錯体。イリジウムの価数は+3。パッと見1価のイリジウム錯体と勘違いしそうですが、イリジウム-炭素結合があることに注意。このイリジウム錯体が青色光を吸収して励起されると、金属-配位子電荷移動を経て還元力を持つ化学種になる。

で、ここでおや?と思いました。還元力を持つということは、励起されたイリジウム錯体が基質に対して電子を与える立場にある。錯体のどの部分から?還元もありなら酸化もありなのか?と。

とりあえずカチオンの部分だけでもモデリングすれば何かわかるかもしれない(まず論文探せと怒られそうですが)。で、無理くりやったのがこれ


光励起されて金属-配位子電荷移動って、どの配位子になんだ?と思っていましたが、モデリングしてわかるtert–ブチル基の偉大さ。こっちの配位子に基質を近づかせない、フッ素原子がくっついている側の配位子のところで基質との電子のやり取りをしたいということでしょうか。だとしたら還元力などがチューニングされた似たような構造のイリジウム錯体が多種類合成・市販されているの、理解できます。フッ素が結合している配位子が2つ、tert–ブチル基が結合している配位子が1つというのは、金属-配位子電荷移動が効率よく起きるように対称性を崩すのが狙いでしょうか(適当)。今度詳しい人に聞いてみたい。

というわけで運よくモデリングはできましたが、計算するにはマシンが非力。やってもいいけど終わるまでに春の嵐で停電しそう。そんなわけで計算は保留です。

中心金属と基質の間の電子のやり取りは、できるのかな。Outer-sphere型の電荷移動になるのかな(だからまず調べろ俺)。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
今はその名ではない、某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
Xアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

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