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[読みたい論文] フェノチアジンと光でフェナシルラジカルを発生させて不飽和結合に付加させます

Viewed: 01:19:06 in June 26, 2025

Posted: February 14, 2025

読みたい論文シリーズ− 2025年1Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2025年1〜3月)。

 

Keywords: annulation; 10-phenylphenothiazine; organic photoredox catalyst; Akiyama, Takahiko

Synthesis of indole-fused benzodiazepine derivatives by photocatalyzed cascade reaction (Oishi, Tatsushi; Uchikura, Tatsuhiro; Akiyama, Takahiko)
Chem. Commun. 2025, 61 (12), 2576–2579
URL (Doi): 10.1039/D4CC05755D

 


[読みたい論文] 光学活性リン酸水素エステル触媒でラセミ体のアミンのどっちかをイミンにします
残ったのか変わったのか。
Org. Lett. 2020, 22 (8), 3128−3134.

 

9-フェニルフェノチアジン触媒及び光照射下での2–アセトキシアセトフェノン化合物とインドール化合物の反応。インドール化合物のインドール窒素原子には2–アミノフェニル基が結合しています。生成物は7員環を含むベンゾジアゼピン化合物。2–アセトキシアセトフェノンのアセトキシ基が結合している炭素原子がインドールの窒素原子の隣の炭素原子と結合、カルボニル炭素が2–アミノフェニル基のアミノ基と結合して炭素-窒素二重結合(=イミン構造)が形成し、閉環という様式。

反応の過程でラジカル種が発生することは、Supporting Informationに記載のTEMPOによる捕捉実験により確認されているようです。


ここでおや?と思いました。この捕捉実験でベンゾジアゼピン化合物が生成してないのはいいとして、この捕捉された化合物は何由来なのでしょう。単純に考えれば2–アセトキシアセトフェノンからフェナシルラジカル(·CH2COAr)が発生しているとなるのでしょうが、もし先に2–アセトキシアセトフェノンとインドール化合物が反応してイミンができているとすればどうでしょう。環化する前の中間体が捕捉されることになるのでしょうが、イミンが水などで分解されると、生成するのは2–アセトキシアセトフェノン由来の、インドール化合物が関わらない場合の捕捉化合物と同じなんですよね。

要はフェナシルラジカルがインドールとくっついてからイミンがという順番で閉環するのか、先にイミンができてからラジカルが発生してそいつがインドール環を攻撃して閉環なのか、です。後者の分子内環化の方が有利なケースはよくありますが、できるのが7員環なのでどっちなのかなあと。

そんなわけでその辺りを知りたくて、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
今はその名ではない、某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
Xアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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