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[読みたい論文] エポキシドと二硫化炭素を反応させたら「トリ」チオカーボネートになった

Viewed: 18:01:54 in June 25, 2025

Posted: March 6, 2025

読みたい論文シリーズ− 2025年1Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2025年1〜3月)。

 

Keywords: carbon disulfide; dithiocarbonate; trithiocarbonate; choline chloride; García-Álvarez, Joaquín; Concellón, Carmen; Amo, Vicente del

Organocatalytic CS2 insertion into epoxides in neat conditions: a straightforward approach for the efficient synthesis of Di- and tri-thiocarbonates (López-Aguilar, Marcos; Ríos-Lombardía, Nicolás; Gallegos, Miguel; Barrena-Espés, Daniel; García-Álvarez, Joaquín; Concellón, Carmen; Amo, Vicente del)
Chem. Commun. 2025, 61 (17), 3488–3491
URL (Doi): 10.1039/D4CC05154H

 


チオカーボネート合成に関する論文のようです

December 17, 2021
[読みたい論文] トリチオ炭酸エステルが可逆的付加開裂連鎖移動重合に使えるぞ
AIBNから持ってきました。
J. Am. Chem. Soc. 2021, 143 (49), 20585−20590.

 

アンモニウム塩存在下でのエポキシドと二硫化炭素の反応。エポキシドと二酸化炭素の反応では環状炭酸エステルが生成しますので、この論文の反応はその二硫化炭素版と言えなくもなさそう。ただ、生成物の構造に特徴があって、環状炭酸エステル部位を構成する元素が炭素と硫黄のみ。酸素どこへ行った?

反応の使われるアンモニウム塩、塩化テトラブチルアンモニウムの他に下の構造の塩化コリンもだそうで、後者の場合には生成物の「5員環骨格」の原子の1つが酸素原子であるケースもある模様です。


前述の酸素の行方、というか硫黄の由来が気になって読みたい論文に追加したわけですが、どうやらこの論文の反応、まずはエポキシドと二硫化炭素から一旦5員環構造の化合物が生成、そこからCSOが脱離してエチレンスルフィドとなり、こいつが二硫化炭素と反応してトリチオカーボネートにという機構のようで。二硫化炭素がたくさん使われているからというのもあるでしょうが、二硫化炭素、二酸化炭素とかよりも反応性がものすごく高かったっけな。それとも炭酸エステルよりもトリチオカーボネートの方が化学的に安定?CSO脱離のステップも、二硫化炭素脱離との競争があるだろうし。


そんなわけでなんでこの反応がうまいこといくのか知りたいので、後で本文をじっくり読みたいと思います。上のスキームの真ん中の化合物、酸素が「そっち側」にあるのなんでなんかね。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
今はその名ではない、某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
Xアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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