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[読みたい論文]カルボニル炭素をアニオンにしてカルコゲノエステルを合成します

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Posted: October 7, 2024

読みたい論文シリーズ− 2024年4Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します。読んでないので時々間違えます(2024年10〜12月)。

 

Keywords: umpolung; Si; Se; Te; Brook rearrangement; Masuda, Ryosuke; Kusama, Hiroyuki

Umpolung Synthesis of Selenoesters and Telluroesters via the Photoinduced Coupling of Acylsilanes with Electrophilic Chalcogen Reagents (Masuda, Ryosuke; Anami, Yuki; Kusama, Hiroyuki)
Org. Lett. 2024, 26 (38), 8011–8016
URL (Doi): 10.1021/acs.orglett.4c02757

 


カルコゲノエステルの合成に関する論文のようです。

December 28, 2021
[読みたい論文] アシルシラン由来のカルベンとジエンからシクロペンテノン骨格を作ります
Fischerカルベン懐かしい。
Org. Lett. 2021, 23 (24), 9490−9494.

 

青色光照射下、場合によってはルイス酸触媒存在下で進行する、アシルシランとセレン又はテルル求電子剤の反応。セレノエステルなど、カルボン酸エステルの(カルボニルでない方の)酸素原子がセレン又はテルル原子に置き換わった構造の化合物が生成します。

同じ構造の化合物の合成法としては、アシルカチオン等価体とカルコゲン求核剤の反応がありますが、この論文の反応ではアシルアニオン等価体とカルコゲン求電子剤の組み合わせ。合成等価体的に従来と逆であることが、論文のセールスポイントとなっている模様。

この反応を実現するのが、アシルシランの光励起。アシルシランそのもののカルボニル炭素はカチオン等価体ではありますが、光照射下でカルボニル炭素に結合しているシリル基が酸素原子に転位、元のカルボニル炭素はカルベン構造となり、炭素陰イオンのような挙動を示すようになる、と。


個人的に気になるのは反応の一般性。アシルシラン合成はカルボン酸ハライド合成よりも容易ではないと思うので、それを超える合成的価値がどのくらいあるのか。そのあたりを知りたいので、読みたい論文に追加しました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
今はその名ではない、某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
Xアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

 

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