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[読みたい論文] クロム触媒下で進む有機マグネシウムと酢酸ビニル等との交差カップリング

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Posted: November 20, 2019

Chromium(II)-Catalyzed Diastereoselective and Chemoselective Csp2−Csp3 Cross-Couplings Using Organomagnesium Reagents (Li, Jie; Ren, Qianyi; Cheng, Xinyi; Karaghiosoff, Konstantin; Knochel, Paul)
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (45), 18127−18135.

Keywords: Cr; Nozaki−Himaya−Kishi reaction; Knochel, Paul; 有機化学; ブログ


2価クロム触媒存在下での、有機マグネシウム化合物とヨウ化アルキル又は酢酸ビニル化合物の反応に関する論文のようです。用紙を読んだ時点では2つのストーリーを少々無理くりにまとめた感じはしますが、sp2炭素−sp3炭素結合形成反応であることが共通している模様。

2価クロムといえばNozaki−Himaya−Kishi反応を思い出しますがそれはさておき、他の遷移金属触媒下の炭素−炭素結合反応が多数報告されている中、この反応にどのようなメリットがあるのか(というか著者らがどう考えているのか)を知りたいので、読みたい論文に追加しました。選択性がどうとか配位子がどうとか以上ものがあるのか、ですね。

ところで酢酸ビニル化合物と反応させる場合なのですが、エステルですからカルボニル炭素と有機マグネシウムの教科書的な反応がどう抑えられているのかは、個人的には確認しておきたいところです。それと酢酸ビニル化合物は、確かケトンと無水酢酸から合成できるはずで、だったらケトンと有機マグネシウムを反応させてから脱水すればいいじゃんかと、これに対する答みたいものが論文に書かれているのか、ですね。

そもそもこれが何故J. Am. Chem. Soc.なのか、論文の内容に相応のインパクトがあるはずなので。立体選択性云々とかだけではなさそうな。合成例は多そうですね。

あと1価クロムとかどうやって確認するんだろう…。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

脚ピンチャシロさん。

 

計算終わりました

 

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