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[読みたい論文] ベンジルマンガンとヨウ化アルケニルの交差カップリング

Viewed: 13:00:25 in July 3, 2025

Posted: November 7, 2019
[有機化学] [ブログ]

Iron-Catalyzed Cross-Coupling of Functionalized Benzylmanganese Halides with Alkenyl Iodides, Bromides, and Triflates (Desaintjean, Alexandre; Belrhomari, Sophia; Rousseau, Lidie; Lefèvre, Guillaume; Knochel, Paul)
Org. Lett. 2019, 21 (21), 8684−8688.

Keywords: Mg; Mn; Li; Fe; THF; MTBE; Zn; Knochel, Paul


Knochel教授はどんだけ論文出すんだよ、というか、どんだけKnochel教授の論文が刺さるんだよ俺。

Graphical Abstract、マンガン(Mn)とマグネシウム(Mg)の違いに要注意です。塩化鉄(II)触媒下、ベンジルハライド化合物とマグネシム金属とMnCl2·2LiClから調製したベンジルマンガン化合物とヨウ化アルケニル化合物との交差カップリングにより炭素−炭素結合を形成する反応に関する論文、のようです。ヨウ化アルケニル化合物の幾何異性が維持された化合物が生成するのも、この論文の売りの一つ。有機亜鉛化合物とマンガン化合物の比較を行なっているのがKnochel教授らしいと言えばらしいですね。ちなみにMnCl2·2LiClはTHF溶液として取り扱っている模様。

Supporting Information記載の実験操作を見ておや?と思ったのが、塩化ベンジル化合物とマグネシウム金属、MnCl2·2LiClを反応させる温度が−5℃であること。塩化ベンジル化合物とマグネシウム金属の反応て−5℃で起こるものなのかな、と。ベンジルマンガン化合物ができる経路がとても気になります。マグネシウム金属が還元剤として機能することは明らかなのですが、直接還元しているのは塩化ベンジル化合物なのか、それともMnCl2·2LiClなのか。とても気になるので、読みたい論文に追加しました。

ベンジルマンガン化合物と塩化鉄(II)からなるアート錯体のでろんでろんな1H NMRスペクトルは一見の価値あり。δ (ppm) が31, −50, −70とかすごすぎます。残留しているベンジルマンガン化合物のが20と−30というのもですが。

E/Z比1:99とかどうやって決めたんだろ。あとヨウ化物合成はトリフェニルホスフィンを使うやつかな。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

計算終わりました

 

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[読みたい論文] 求電子置換型の酸クロリドとアルケンの反応です
アルミニウム触媒と塩基の使い方が絶妙。
Org. Lett. 2019, 21 (21), 8509−8513.

[読みたい論文] カルベンがアレーンの芳香族性を破壊してシクロプロパン骨格になります
金属触媒なし、可視光下で進みます。
Org. Lett. 2019, 21 (21), 8814−8818.

[読みたい論文] クロロシランも金属触媒も使わずにベンゼン環炭素−ケイ素結合を形成します。
ビフェニル化合物とヒドロシランからのシラフルオレン合成。
Chem. Commun. 2019, 55 (88), 13303−13306.

[読みたい論文] イミダゾリウム塩から超リッチな化合物を合成します。
電子供与力のとても高い含窒素π共役系。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (43), 17112−17116.

[読みたい論文] 強塩基を使わない末端アルキンと有機ハライドのクロスカップリング
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Chem. Commun. 2019, 55 (87), 13070−13073.

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[読みたい論文] 芳香環の芳香族性をぶっ壊してエーテル結合とアミン結合を作ります。
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Angew Chem. Int. Ed. 2019, 58 (44), 15762−15766.

[読みたい論文] Pummerer反応を介してベンゾチオフェン骨格を形成します
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Angew Chem. Int. Ed. 2019, 58 (44), 15675−15679.

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Angew Chem. Int. Ed. 2019, 58 (44), 15631−15635.

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