Archive|Nanoniele|MakiokaFufudo

 

[読みたい論文] 芳香環の芳香族性をぶっ壊してエーテル結合とアミン結合を作ります。

Viewed: 05:09:03 in July 16, 2025

Posted: October 28, 2019
[有機化学] [ブログ]

Palladium−Catalyzed Dearomative syn−Oxyamination (Tang, Conghui; Okumura, Mikiko; Deng, Hejun; Sarlah, David)
Angew Chem. Int. Ed. 2019, 58 (44), 15762−15766.

Keywords: Pd; syn; MTAD; dba; Sarlah, David


「Graphical Abstractにベンゼン環書いときながらナフタレンがメインかい」と冷めた目でSupporting Informationを読み始めましたが、私が間違っていました。

可視光照射下でのアレーンとアゾ化合物の環化付加反応とPd触媒下での炭素−酸素結合形成反応を組み合わせた1,4-オキシアミノ化反応に関する論文のようです。アレーン由来の6員環から見て、同じ方向に酸素原子と窒素原子があるので、"syn"とタイトルや要旨にあるのでしょう。

光照射下での反応に関する論文の場合は、光源の発行ピーク波長やスペクトルを確認するの必要あり、で、Supporting Informationを見ると、ピーク波長が500nm台後半にある、スペクトル幅の広い白色LEDを使用している模様。少しだけ青成分と赤成分を追加している感じにも見えるのは私だけでしょうか。

反応条件の最適化にはアレーンにナフタレンアゾ化合物にMTAD、OH基を持つ化合物にアセトフェノンオキシムというちょっと特殊なものを使っていますが、アセトフェノンオキシムの代わりにベンジルアルコール系の化合物も使えるようですし、アレーンがベンゼンであってもいけるので、基質の適用範囲は広いのではと、論文を読んでもいない段階で期待してしまいます。また、Pd触媒と光学活性配位子を組み合わせることによる光学純度の高い化合物の合成や、得られた1,4-オキシアミノ化物の誘導など、Graphical Abstractや要旨テキストに書かれているような単純なアレーンからの高度に官能基化された小分子化合物の合成に関する膨大なコンテンツが、論文に含まれていると思われます。そんなわけで、読みたい論文に追加です。

関連論文に関する記事

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

きょうのどうぶつ

ここの画像を使用しています。

近所で見かけたミノムシ。

 

計算終わりました

 

あわせてどうぞ

[読みたい論文] 芳香族性ぶっこわし
付加体の水素て、どっから来たん?

2019年の記事一覧
お仕事関係の記事のリストです(2019年)。

読みたい論文シリーズ− 2019年4Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2019年10〜12月)。

 

[読みたい論文] Pummerer反応を介してベンゾチオフェン骨格を形成します
メチル基はどこへ?
Angew Chem. Int. Ed. 2019, 58 (44), 15675−15679.

[読みたい論文] ランタン反応剤とハロゲン化ビフェニルでランタン−炭素結合を2つ作ります
クラシックなランタンの化学を新しい反応剤で。
Angew Chem. Int. Ed. 2019, 58 (44), 15631−15635.

[読みたい論文] アシルシランとピナコールボランの反応をカルベン経由で
「カルベン」をどうやって確認したんだろう。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (41), 16227−16231.

[読みたい論文] ケトンのα−炭素と芳香環とかをアルケンの両方の炭素にくっつけます。
ニッケルを使用していますが真の触媒が気になります。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (41), 16249−16254.

[読みたい論文] カルシウム触媒がベンゼン環のC−H結合を活性化します。
アルミニウム(I)とアレーンからの酸化的付加反応。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (43), 15496−15503.

[読みたい論文] Diels−Alderで芳香環の結合をぶった切ります
レトロもあるよ。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (40), 15901−15909.

[読みたい論文] はじめてのネプツニウム錯体
配位子ブーン⊂二二二( ^ω^)二⊃
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14891−14895.

[読みたい論文] 位置も幾何異性も制御できるシリルエノールエーテル合成
頑張れば触媒的合成にできるか。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14995−14999.

[読みたい論文] アリールトリフルオロメチルスルホンでSuzuki−Miyauraカップリング
トリフルオロメチルスルホニル基の脱離能はどの程度か。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14959−14963.

[読みたい論文] ニッケル触媒下でアルケニルトリフラートからアルケニルハライドを合成します。
エノールトリフラートという呼び方は初耳かも。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14901−14905.

 

注目のWebコンテンツ

水素貯蔵の可能性のある
(村井君のブログ)
http://murai-kun.cocolog-nifty...

ブログ始めて10年目らしいですよ
(たゆたえども沈まず-有機化学あれこれ-)
http://orgchemical.seesaa.net/...

クリック化学では
(村井君のブログ)
http://murai-kun.cocolog-nifty...

鈴木・宮浦カップリング反応では
(村井君のブログ)
http://murai-kun.cocolog-nifty...

超高速X線分光が拓く原子レベルの分子動画観測
(Chem-Station)
https://www.chem-station.com/b...

第15回企業力ランキング/NTT、2年連続首位 デンソーが部品で初ベスト10
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

活性化T細胞“制御性”に 京大・アステラス、化合物を発見
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/space...

気道上皮組織でインフルエンザウイルスを感知する病原体センサーのたんぱく質を発見
(JST)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...
筑波大学医学医療系川口敦史准教授、SangjoonLee研究員、永田恭介学長らの研究グループは、同医学医療系野口雅之教授、独国フライブルグ大学PeterStaeheli教授、MartinSchwemmle教授らの各研究グループと共同で、気道上皮組織に特異的な炎症応答を制御するウイルス感染のセンサー分子として、MxAたんぱく質を同定しました…

軽量で安全な水素キャリア材料を開発 −室温・大気圧において光照射のみで水素を放出−
(東京大学)
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp...
東京工業大学物質理工学院材料系の河村玲哉修士課程2年、宮内雅浩教授、筑波大学の近藤剛弘准教授、NguyenThanhCuong(ニュエンタンクオン)研究員、岡田晋教授、高知工科大学の藤田武志教授、東京大学物性研究所の松田巌准教授らの共同研究グループは、ホウ素と水素の組成比が1:1のホウ化水素シートが室温・大気圧下において光照射のみで水素を放出できることを見出した…

英文年報「NIES Annual Report 2019」の刊行について
(国立環境研究所)
http://www.nies.go.jp/whatsnew...
国立研究開発法人国立環境研究所(以下、「国立環境研究所」という…

海底熱水地域に広がる金属資源の「二階建て」地下分布の可視化に成功 ―日本発の海底資源開発に欠かせない、高効率・非破壊の海底探査技術の確立―
(兵庫県立大学)
https://www.u-hyogo.ac.jp/outl...
昨今の世界的な経済成長に伴って、金属資源の減耗・枯渇が懸念される中、海域の金属資源に注目が集まっています…

iPS 細胞を用いた研究により、精神疾患に共通する病態を発見 -双極性障害・統合失調症の病態解明、治療薬開発への応用に期待-
(名古屋大学)
https://www.med.nagoya-u.ac.jp...
名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野(尾崎紀夫教授、久島周病院講師)、慶應義塾大学医学部生理学教室(岡野栄之教授)、大日本住友製薬株式会社リサーチディビジョン疾患iPS創薬ラボ(石井崇也研究員兼慶應義塾大学医学部生理学教室共同研究員)を中心とする共同研究グループは、ゲノムコピー数変異(copynumbervariation:以下、CNV)を有する双極性障害(および統合失調症(患者に由来するiPS細胞(注4)を用いた研究を行い、両疾患に共通した病態として、神経細胞の形態に異常が生じることを見出しました…

海底熱水地域に広がる金属資源の「二階建て」地下分布の可視化に成功 ―日本発の海底資源開発に欠かせない、高効率・非破壊の海底探査技術の確立―
(九州大学)
http://www.kyushu-u.ac.jp/f/37...
昨今の世界的な経済成長に伴って、金属資源の減耗・枯渇が懸念される中、海域の金属資源に注目が集まっています…

昆虫は活性酸素を上手に利用する〜蛹(さなぎ)になるために活性酸素を利用する仕組みを発見〜
(東京農工大学)
http://www.tuat.ac.jp/outline/...
国立大学法人東京農工大学大学院連合農学研究科野島陽水(大学院博士課程修了生)と農学研究院生物生産科学部門天竺桂弘子准教授、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設ライフサイエンス統合データベースセンターの坊農秀雅特任准教授を中心とする研究グループは、チョウ目に属する昆虫が強いストレスに対峙した場合に、蛹化が早まる現象の分子メカニズムの一端を解明しました…

溶剤を用いずに剥がせる塗料材の作製技術を開発 −簡便に除去できるジェルネイルなどへの応用に期待−
(産業技術総合研究所)
https://www.aist.go.jp/aist_j/...
国立研究開発法人産業技術総合研究所【理事長中鉢良治】(以下「産総研」という)機能化学研究部門【研究部門長北本大】スマート材料グループ山本貴広主任研究員は、株式会社TAT【代表取締役??野芳樹】(以下「TAT」という)と共同で、溶剤を用いずに剥がせる塗料材の作製技術を開発した…

ナノサイズの「異空間」をもつ新物質 反芳香族分子で構築された新しい分子ケージの開発に成功
(東京工業大学)
https://www.titech.ac.jp/news/...
東京工業大学理学院化学系の山科雅裕助教(当時・JSPS海外特別研究員)とJonathanR.Nitschke教授(英国ケンブリッジ大学)らの研究グループは、取り扱いが困難な反芳香族分子を基盤にしたナノサイズの分子ケージ(かご状分子)の構築に世界で初めて成功した…

バイオバンク横断検索システムの運用開始 〜国内のバイオバンク7機関で保有する65万検体の試料・ 20万件の情報が一括で検索可能に〜
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...

省エネ・低コストで二酸化炭素を分離する膜技術が実用化
(神戸大学)
https://www.kobe-u.ac.jp/resea...
神戸大学先端膜工学研究センター長の松山秀人教授らが、株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチ(RER)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同開発した、二酸化炭素(CO2)を分離する「CO2促進輸送膜」が、2020年に実用化されます…

5セントコインのあだ名にも 〜世界の硬貨やステンレスに使われるニッケル
(高純度化学研究所)
https://www.kojundo.blog/exper...


学問・科学ランキング 科学ランキング 自然科学ランキング 化学ランキング