Archive|Nanoniele|MakiokaFufudo

 

[読みたい論文] アシルシランとピナコールボランの反応をカルベン経由で

Viewed: 10:45:23 in July 2, 2025

Posted: October 23, 2019
[有機化学] [ブログ]

Visible-Light-Induced, Metal-Free Carbene Insertion into B−H Bonds between Acylsilanes and Pinacolborane (Ye, Jian-Heng; Quach, Linda; Paulisch, Tiffany; Glorius, Frank)
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (41), 16227−16231.

Keywords: Si; BPin; Glorius, Frank


可視光照射下でのアシルシランとピナコールボランの反応に関する論文のようです。光励起によりアシルシランのケイ素原子が転位して発生したカルベンのホウ素−水素結合への挿入が、この反応の鍵であり、この論文の売りの一つでもあります。アシルシランて可視光でこんな反応を起こすんだったっけな。

この論文の反応ではホウ素−炭素結合が形成されるのですが(アシルシランの反応では下の図の構造のような化合物が生成するはず)、教科書的なカルボニル化合物とボランの反応では、ホウ素−酸素結合が形成されます。光励起の有無で生成物が全く異なるのか正直疑問で、もしかしたら両方の種類の生成物が共存しているのではないかと、Supporting Informationにざっと目を通しましたが、欲しい情報は見つかりませんでした。もしかしたら本文中に書いているかもしれないので、読みたい論文に追加です。


反応機構に関してもう一つ気になるのが、カルベンが発生している証拠。ピナコールボラン以外の捕捉剤を使用した時に予想通りの反応が進行するとか、アシルシランの光励起によりカルベンが発生する例があるとか、そこいらへんの話も本文中に書いてあるかもしれませんね。

あるかもと思って検索したらありました。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

きょうのどうぶつ

ここの画像を使用しています。

定時にやってくるチャシロさん。

 

計算終わりました

 

あわせてどうぞ

2019年の記事一覧
お仕事関係の記事のリストです(2019年)。

読みたい論文シリーズ− 2019年4Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2019年10〜12月)。

 

[読みたい論文] ケトンのα−炭素と芳香環とかをアルケンの両方の炭素にくっつけます。
ニッケルを使用していますが真の触媒が気になります。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (41), 16249−16254.

[読みたい論文] カルシウム触媒がベンゼン環のC−H結合を活性化します。
アルミニウム(I)とアレーンからの酸化的付加反応。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (43), 15496−15503.

[読みたい論文] Diels−Alderで芳香環の結合をぶった切ります
レトロもあるよ。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (40), 15901−15909.

[読みたい論文] はじめてのネプツニウム錯体
配位子ブーン⊂二二二( ^ω^)二⊃
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14891−14895.

[読みたい論文] 位置も幾何異性も制御できるシリルエノールエーテル合成
頑張れば触媒的合成にできるか。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14995−14999.

[読みたい論文] アリールトリフルオロメチルスルホンでSuzuki−Miyauraカップリング
トリフルオロメチルスルホニル基の脱離能はどの程度か。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14959−14963.

[読みたい論文] ニッケル触媒下でアルケニルトリフラートからアルケニルハライドを合成します。
エノールトリフラートという呼び方は初耳かも。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14901−14905.

[読みたい論文] 金触媒下でのヨウ化アリールのアミノ化
Buchwald−Hartwigアミノ化より有利な点とは。
Org. Lett. 2019, 21 (19), 8101−8105.

[読みたい論文] ねじれたでかいアミドの炭素−窒素結合切断を経るSuzuki−Miyauraカップリング
ねじれればねじれるほどに速くなる。
Org. Lett. 2019, 21 (19), 7976−7981.

[読みたい論文] なぜかラジカル反応で進行するアミド交換反応
KOtBuが絡むと色々ややこしい。
Org. Lett. 2019, 21 (17), 6690−6694.

 

注目のWebコンテンツ

なぜウイスキーは水割りにすると香り高くなるのか!?【youtube始めました】
(有機化学論文研究所)
https://moro-chemistry.org/arc...

円二色性(CD)スペクトルでは
(村井君のブログ)
http://murai-kun.cocolog-nifty...

パントテンアミドは
(村井君のブログ)
http://murai-kun.cocolog-nifty...

超高温モシブチック合金の凝固過程を解明 黒体放射を利用した新規超高温熱分析装置の開発と浮遊法による凝固過程のその場観察手法の確立
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...
東北大学多元物質科学研究所の福山博之教授、大塚誠准教授と同大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻の吉見享祐教授の共同研究グループは、黒体放射を利用した、2000℃以上の温度でも計測可能な超高温熱分析装置を開発し、次世代の超高温材料として期待されるモシブチック合金(モリブデンを主成分とし、シリコン、ボロン、チタン、炭素などを含む合金)の凝固過程の熱分析に成功しました…

アゾベンゼンは光る!~新たな発光材料として期待~
(Chem-Station)
https://www.chem-station.com/c...

予測不能なことを予測する:新しい認知モデル
(沖縄科学技術大学院大学)
https://www.oist.jp/ja/news-ce...
認知科学者は、コンピュータのシミュレーションにより人間の脳内の働きをモデル化していますが、現行のモデルの多くは本質的な部分に誤りが生じがちでした…

超高温モシブチック合金の凝固過程を解明 〜黒体放射を利用した新規超高温熱分析装置の開発と 浮遊法による凝固過程のその場観察手法の確立〜
(JST)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...
東北大学多元物質科学研究所の福山博之教授、大塚誠准教授と同大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻の吉見享祐教授の共同研究グループは、黒体放射を利用した、2000℃以上の温度でも計測可能な超高温熱分析装置を開発し、次世代の超高温材料として期待されるモシブチック合金(モリブデンを主成分とし、シリコン、ボロン、チタン、炭素などを含む合金)の凝固過程の熱分析に成功しました…

昆虫の特異的な腸内共生は細菌間の競合によって形作られる
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...
北海道大学大学院農学院博士後期課程のJangSeonghan氏と,同農学研究院客員准教授及び産業技術総合研究所生物プロセス研究部門主任研究員の菊池義智氏らの研究グループは,国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と共同で,秋田県立大学,フランス国立科学研究センター(CNRS)と協力し,昆虫のシンプルな腸内共生系の成立と維持において,細菌間の腸内競合が決定的な役割を果たすことを明らかにしました…

酸化的C-N結合形成を触媒するラジカル酵素反応機構の解明と酵素を利用した非天然型新規活性化合物の創出に成功
(東京大学)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focu...
テレオシジン類は強力なproteinkinaseCの活性化作用を示し、医薬品のシード化合物としても注目される化合物群です…

たとえばこんな「化学の日」に
(化学工業日報)
https://www.chemicaldaily.co.j...

ビジネストレンド/原油調達、有事に備え サウジ一時停止でリスク表面化
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

豚のストレス、焼酎粕で緩和 キリンが飼料に活用
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

大脳皮質-基底核投射神経細胞は幼弱期の発声学習に必要
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...
北海道大学大学院理学研究院の和多和宏准教授らの研究グループは,小鳥(鳴禽類スズメ目)の一種キンカチョウを用いて,ヒトを含む哺乳類にも存在する大脳皮質から基底核へ投射している神経細胞の発声学習・生成における役割を明らかにしました…

アッカド帝国崩壊の原因をサンゴの化石から解明〜サンゴの化石から復元した月単位の古気候記録の証拠〜
(北海道大学)
https://www.hokudai.ac.jp/news...
北海道大学大学院理学研究院講師及びNPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所理事長の渡邊剛氏,九州大学大学院理学研究院助教及び同研究所長兼副理事長の山崎敦子氏,北海道大学大学院理学院博士後期課程の渡邉貴昭氏らの研究グループは,メソポタミア文明初の帝国(アッカド帝国)の崩壊に繋がった気候変動の詳細を,化石サンゴの記録から明らかにしました…

コモン・マーモセットの大脳皮質運動野を光刺激することで腕の運動を誘発することに成功
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/201...
東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻生理学講座細胞分子生理学分野の松崎政紀教授(理化学研究所脳神経科学研究センター脳機能動態学連携研究チームチームリーダー)、蝦名鉄平助教、自治医科大学分子病態治療研究センター遺伝子治療研究部の水上浩明教授、自然科学研究機構生理学研究所生体システム研究部門の南部篤教授、理化学研究所脳神経科学研究センター高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダーらの研究チームは、霊長類コモン・マーモセット大脳皮質運動野の神経活動を光遺伝学の技術で操作(光刺激)することによって腕の運動を誘発できる事、また運動関連領域を網羅的に光刺激することで、異なった方向への腕の動きが運動野の中の別々の領域で表現されている事を明らかにしました…

赤錆を用いて水と太陽光から水素を製造 ―太陽光水素製造システムの実用化に新たな一歩―
(神戸大学)
https://www.kobe-u.ac.jp/resea...
神戸大学分子フォトサイエンス研究センターの立川貴士准教授のグループは、名古屋大学未来材料・システム研究所の武藤俊介教授、高輝度光科学研究センターの尾原幸治主幹研究員、杉本邦久主幹研究員との共同研究により、太陽光を用いて水から水素を高効率に生成できる光触媒電極の開発に成功しました…

ペプチドによる色素体の改変 −狙ったDNAを迅速に導入−
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/201...
理化学研究所(理研)環境資源科学研究センターバイオ高分子研究チームのチョンパラカン・タグン特別研究員、ジョアン・チュア研究員(研究当時)、沼田圭司チームリーダーらの研究チームは、2種類の機能性ペプチドを組み合わせることで、DNAを植物細胞の多様な色素体に導入できることを明らかにしました…


学問・科学ランキング 科学ランキング 自然科学ランキング 化学ランキング