[読みたい論文] アシルシランとピナコールボランの反応をカルベン経由で

Viewed: 11:06:53 in December 13, 2019

Posted: October 23, 2019
[有機化学] [ブログ]

Visible-Light-Induced, Metal-Free Carbene Insertion into B−H Bonds between Acylsilanes and Pinacolborane (Ye, Jian-Heng; Quach, Linda; Paulisch, Tiffany; Glorius, Frank)
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (41), 16227−16231.

Keywords: Si; BPin


可視光照射下でのアシルシランとピナコールボランの反応に関する論文のようです。光励起によりアシルシランのケイ素原子が転位して発生したカルベンのホウ素−水素結合への挿入が、この反応の鍵であり、この論文の売りの一つでもあります。アシルシランて可視光でこんな反応を起こすんだったっけな。

この論文の反応ではホウ素−炭素結合が形成されるのですが(アシルシランの反応では下の図の構造のような化合物が生成するはず)、教科書的なカルボニル化合物とボランの反応では、ホウ素−酸素結合が形成されます。光励起の有無で生成物が全く異なるのか正直疑問で、もしかしたら両方の種類の生成物が共存しているのではないかと、Supporting Informationにざっと目を通しましたが、欲しい情報は見つかりませんでした。もしかしたら本文中に書いているかもしれないので、読みたい論文に追加です。


反応機構に関してもう一つ気になるのが、カルベンが発生している証拠。ピナコールボラン以外の捕捉剤を使用した時に予想通りの反応が進行するとか、アシルシランの光励起によりカルベンが発生する例があるとか、そこいらへんの話も本文中に書いてあるかもしれませんね。

あるかもと思って検索したらありました。

この記事を書いた人
「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

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