Archive|Nanoniele|MakiokaFufudo

 

[読みたい論文] Diels−Alderで芳香環の結合をぶった切ります

Viewed: 05:16:20 in July 1, 2025

Posted: October 17, 2019
[有機化学] [ブログ]

Activating Pyrimidines by Pre-distortion for the General Synthesis of 7-Aza-indazoles from 2-Hydrazonylpyrimidines via Intramolecular Diels−Alder Reactions (Fouler, Vincent Le; Chen, Yu; Gandon, Vincent; Bizet, Vincent; Salomé, Christophe; Fessard, Thomas; Liu, Fang; Houk, K. N.; Blanchard, Nicolas)
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (40), 15901−15909.

Keywords: Diels−Alder reaction; TFAA; 3-pentanone; THF; MW; Blanchard, Nicolas


ピリミジンとインオン化合物の脱水縮合とDiels−Alder反応、レトロ(逆)Diels−Alder反応を経る7-アザインダノール合成について報告している論文のようです。この論文の売りは合成そのものにもあるでしょうし、反応の過程でピリミジン環が切断される珍しい現象にもあるのだと思います。

そのピリミジン環の切断はDiels−Alder反応とレトロDiels−Alder反応によって引き起こされるわけですが、Graphical Abstractを見ただけでは私には何がなんだかわかりませんでした。あれはδ+だのδ−だのを加えんといかんかと。幸いSupporting InformationにDFT計算のデータがありましたので、反応のメカニズムは大体こんなんじゃないかなと想像はできました。合っているかどうかは本文を読んで確認しないといけませんが。


この反応、Graphical Abstractにはシンプルに描かれていますが、反応がマイクロ波照射下で行われていたり、添加剤を加えていたりと、見えていないところがあったりします。無水トリフルオロ酢酸は出発の基質が縮合する時の「お水取り」であることはわかりますが、3-ペンタノンについてはちょっと考えました。脱離するシアン化水素を捕捉するためのものなのでしょうが、マイクロ波照射下での反応ですので、マイクロ波を吸収して反応系の温度を上げるためのものでもあるかなと思いました。これも本文でチェックしないといけませんね。

とまあ色々わからないことがあるので読みたい論文に追加です。実験量多いですね。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

きょうのどうぶつ

ここの画像を使用しています。

某大学の近くで見かけたカマキリ。左腕がない?

 

計算終わりました

 

あわせてどうぞ

2019年の記事一覧
お仕事関係の記事のリストです(2019年)。

読みたい論文シリーズ− 2019年4Q
読みたいけと読んでいない論文を、構造式を描きながら紹介します(2019年10〜12月)。

 

[読みたい論文] はじめてのネプツニウム錯体
配位子ブーン⊂二二二( ^ω^)二⊃
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14891−14895.

[読みたい論文] 位置も幾何異性も制御できるシリルエノールエーテル合成
頑張れば触媒的合成にできるか。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14995−14999.

[読みたい論文] アリールトリフルオロメチルスルホンでSuzuki−Miyauraカップリング
トリフルオロメチルスルホニル基の脱離能はどの程度か。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14959−14963.

[読みたい論文] ニッケル触媒下でアルケニルトリフラートからアルケニルハライドを合成します。
エノールトリフラートという呼び方は初耳かも。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14901−14905.

[読みたい論文] 金触媒下でのヨウ化アリールのアミノ化
Buchwald−Hartwigアミノ化より有利な点とは。
Org. Lett. 2019, 21 (19), 8101−8105.

[読みたい論文] ねじれたでかいアミドの炭素−窒素結合切断を経るSuzuki−Miyauraカップリング
ねじれればねじれるほどに速くなる。
Org. Lett. 2019, 21 (19), 7976−7981.

[読みたい論文] なぜかラジカル反応で進行するアミド交換反応
KOtBuが絡むと色々ややこしい。
Org. Lett. 2019, 21 (17), 6690−6694.

[読みたい論文] 温和な条件下で進むケトンのα-アリール化
Pd触媒とホスフィンイリド配位子を使います。
Org. Lett. 2019, 21 (18), 7558−7562.

[読みたい論文] テトラビニルアレン
いびき防止テープ。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (40), 14573−14577.

[読みたい論文] シレン(Si=C)のZ/E異性化の途中でシリレンになっていた
Beckmann転位と似ているような似ていないような。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (40), 14524−14528.

 

注目のWebコンテンツ

医薬品開発では
(村井君のブログ)
http://murai-kun.cocolog-nifty...

光合成を駆動しない遠赤色光が光合成を促進する
(東京大学)
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja...
陸上植物は波長400–700nmの青色〜赤色の領域の光、つまり可視光領域の光を吸収して光合成を行うので、この波長域の光は光合成有効放射とよばれる…

鴻が見る風景 ~山本尚教授の巻頭言より~
(Chem-Station)
https://www.chem-station.com/b...

女子生徒の進学を阻む要因は? 〜保護者の男女平等度や性役割態度、理系分野に対するイメージ分析から見えるもの〜
(JST)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(KavliIPMU)の横山広美教授を中心とする東京大学、NIRA総合研究開発機構、滋賀大学、名古屋大学のメンバーからなる研究チームは、女子生徒の理系進学が少ない根本的な理由として、2つの点に注目をしました…

スチレンモノマー アジアで一段安 原料ベンゼンも弱含み
(化学工業日報)
https://www.chemicaldaily.co.j...

生理学研と東工大、透過型電子顕微鏡に線形加速器の原理採用 高分解能で小型化
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

経産省と環境省、バイオプラ開発支援拡充 プラゴミ抑制
(日刊工業新聞)
https://www.nikkan.co.jp/artic...

第1回輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞) 受賞者の決定と表彰式開催について
(JST)
https://www.jst.go.jp/pr/info/...
JST(理事長?M口道成)は、第1回輝く女性研究者賞(ジュンアシダ賞)の受賞者を決定しました(別紙1)…

安定で強い反芳香族性を示す含窒素多環式化合物の合成に成功!
(愛媛大学)
https://www.ehime-u.ac.jp/data...
愛媛大学大学院理工学研究科の沖光脩博士後期課程学生、??瀬雅祥准教授、森重樹特任講師、宇野英満教授らのグループは、反芳香族性を示す拡張アザコロネンの合成に初めて成功しました…

形状記憶効果を示すハイエントロピー合金を開発
(物質・材料研究機構)
https://www.nims.go.jp/news/pr...
NIMSはソウル国立大学と共同で、形状記憶効果を示すハイエントロピー合金を開発しました…

太陽光で働く新しい水分解光電極を開発 電気エネルギーなしで安定に駆動する光電極の実現に期待
(東京工業大学)
https://www.titech.ac.jp/news/...
東京工業大学理学院化学系の前田和彦准教授、平山直樹大学院生らは、鉛とチタンからなる酸フッ化物が太陽光照射下で水を分解する光電極[用語2]として機能することを発見した…

イネの収量に関わる遺伝子の同定 −機械学習を用いた遺伝子同定手法の開発−
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/201...
理化学研究所(理研)革新知能統合研究センター遺伝統計学チームの矢野憲司特別研究員、田宮元チームリーダー、龍谷大学の吉田晋弥客員研究員、名古屋大学の松岡信教授らの共同研究グループは、機械学習と従来の遺伝子同定法を組み合わせた手法により、イネの収量に関わる遺伝子を同定しました…

リグニン誘導体からアクリル樹脂の開発に成功 −非可食性バイオマスを原料に用いたプラスチック開発に期待−
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/201...
理化学研究所(理研)環境資源科学研究センターバイオプラスチック研究チームの阿部英喜チームリーダー、竹中康将研究員、今田基祐研究生らの共同研究チームは、木材の主要成分であるリグニンの分解生成物として知られているリグニン誘導体を原料にして、これまで石油からしか作ることのできなかったアクリル樹脂を開発することに成功しました…

2種類のゼオライトナノ粒子の製造技術を確立 〜透明吸湿性包材の実現や温感化粧品などへの応用が可能に〜
(JST)
https://www.jst.go.jp/pr/annou...
JST(理事長?M口道成)は、研究成果最適展開支援プログラム(A−STEP)企業主導フェーズNexTEP−Aタイプの開発課題「ゼオライトナノ粒子の製造方法と粒径制御技術」の開発結果を成功と認定しました…

RFIDマイクロチップを用いた肺癌手術の臨床使用を開始 −微小肺癌のあたらしい術中位置同定方法−
(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/re...
伊達洋至医学研究科教授、佐藤寿彦同准教授(現・福岡大学准教授)、豊洋次郎同助教、株式会社ホギメディカルらは、「微小肺癌に対するマイクロチップを用いた術前マーキング方法」を開発し、世界で初めて患者への臨床使用を開始しました…

後天的なY染色体の喪失機構 −DNAデータより細胞老化とがん化につながる現象の解明へ−
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/201...
理化学研究所(理研)生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの寺尾知可史チームリーダー、鎌谷洋一郎客員主管研究員(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)らの国際共同研究グループは、男性の性染色体であるY染色体を喪失した細胞が血中に増加する現象(mLOY)における遺伝機構や重要な血液細胞の分化段階、転写因子などを明らかにしました…


学問・科学ランキング 科学ランキング 自然科学ランキング 化学ランキング