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[読みたい論文] シレン(Si=C)のZ/E異性化の途中でシリレンになっていた

Viewed: 10:39:12 in July 2, 2025

Posted: October 2, 2019
[有機化学] [ブログ]

Mechanism of the Thermal Z−E Isomerization of a Stable Silene; Experiment and Theory (Zborovsky, Lieby; Kostenko, Arseni; Bravo-Zhivotovskii, Dmitry; Apeloig, Yitzhak)
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (40), 14524−14528.

Keywords: Si; Ad; Apeloig, Yitzhak


シレンのZ/E異性化について報告している論文のようです。合成や反応探索ではなく、より物理化学的なものかもしれません。上の反応スキームの真ん中の中間体のように、シリル基が転位したシリレン経由で異性化が起こっていると、著者らは視聴している模様です。

Supporting Informationを見る限り、この論文で扱っているシレン化合物は1種類のようで、下のような方法で合成しています。Peterson反応。Z/Eは5:95でE体がリッチ。どっちがZ体でどっちがE体なのかわかりにくいですが、tBu基がより多く結合しているSi原子が優位、そしてアダマンチル基との関係で、となります。


上のような比で生成したシレン化合物の異性化を速度論的に考察するために、著者たちはZ/Eがほぼ1:1の混合物を異なる温度で熱異性化させて、E体が増えていく過程を観察しています。合成したZ体のシレンて少ないのに、しかも一旦個々の異性体を単離してからまた混合しないといかんよなあ、実験した人地獄だっただろうなと思ったりもしたのですが、混合物の光異性化で1:1近くまで持っていけるのですね。

計算上はよくあるビラジカル状態での単結合の回転よりもシリル基転位の方がエネルギー的に優位である、これは確かにわかります(実験値と比べるのはやめときます)。ただ、シリル基転位の結果発生したシリレンを捕捉剤でトラップする試みはうまくいってない模様(disappointingly)で、実験的な何かが欲しいところですね。

計算以外にシリレン機構を支持する実験結果があるのか知りたいので、読みたい論文に追加です。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

1996年はこんな年

人名反応など
Shiエポキシ化 [Doi 1]
ノーベル化学賞
フラーレン(C60)の発見
(Robert Floyd Curl Jr., Harold Walter Kroto, Richard Errett Smalley)
できごと
ポスドク1万人計画
「名探偵コナン」放送開始
「DEPARTURES」(globe)
「Shall we ダンス?」公開
IBMのコンピューター・ディープ・ブルーがガルリ・カスパロフとチェスで初対戦
北海道の豊浜トンネルで岩盤崩落
「渋谷で5時」(鈴木雅之・菊池桃子)
「バンザイ 〜好きでよかった〜」(ウルフルズ)
東京ビッグサイトが開場
日本初のインターネット株取引を大和証券が開始
「みどりのマキバオー」放映開始(フジテレビ)
「Yahoo! JAPAN」がサービスを開始
12市が初の中核市となる
「らい予防法の廃止に関する法律」施行
「ワイド!スクランブル」放送開始(テレビ朝日)
「キャナルシティ博多」オープン
「空も飛べるはず」(スピッツ)
「アジアの純真」(PUFFY)
「独裁 -monopolize-」(T.M.Revolution)
福岡空港ガルーダ航空機離陸事故
海の日施行
住宅金融債権管理機構発足
「Body & Soul」(SPEED)
「水曜どうでしょう」放送開始(北海道テレビ放送)
雌阿寒岳が噴火
「たまごっち」発売(バンダイ)
原爆ドームが世界遺産に登録
スティーブ・ジョブズがアップルコンピュータに復帰

 

きょうのどうぶつ

ここの画像を使用しています。

明らかにデブ化しているチャシロさん。

 

計算終わりました

 

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Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (40), 14104−14109.

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Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (37), 12898−12902.

 

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日本人の身長に関わる遺伝的特徴を解明 −19万人の解析から日本人の身長に関わる遺伝的要因の謎に迫る−
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/201...
理化学研究所(理研)生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの鎌谷洋一郎客員主管研究員(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)、秋山雅人客員研究員、久保充明副センター長(研究当時)、東京大学医科学研究所癌・細胞増殖部門人癌病因遺伝子分野の村上善則教授らの共同研究グループは、日本人約19万人のゲノム解析を行い、身長に関わる573の遺伝的変異を同定しました…

軟X線レーザーナノ集光システムを開発 −2種類の集光ミラーを組み合わせたハイブリッド型−
(理化学研究所)
https://www.riken.jp/press/201...
理化学研究所(理研)放射光科学研究センタービームライン開発チームの本山央人客員研究員(東京大学大学院理学系研究科特任助教)、ビームライン研究開発グループの矢橋牧名グループディレクター、東京大学大学院工学系研究科の三村秀和准教授、高輝度光科学研究センターの大和田成起研究員、大橋治彦主席研究員らの共同研究グループは、軟X線自由電子レーザー(軟X線FEL)を高効率でナノ領域に集光可能なシステムを新たに開発しました…

海洋観測カメラによる有色溶存有機物の観測に成功 〜超小型人工衛星を利用した北極域観測技術の構築に期待〜
(東北大学)
https://www.tohoku.ac.jp/japan...
北海道大学北極域研究センターの齊藤誠一研究員(研究推進支援教授)らの研究グループは、北海道大学及び東北大学が中心となって研究開発された国際理学観測衛星ライズサット(RISESAT:RapidInternationalScientificExperimentSatellite)に搭載した海洋観測カメラOOC(OceanObservationCamera、北海道大学、東北大学、株式会社パスコ及び国立台湾海洋大学が共同開発)による有色溶存有機物(CDOM:ColoredDissolvedOrganicMatter)の観測に成功しました…

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業務サクサク、いつもの論文。
(ある女性研究者の日記)
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微結晶試料のテラヘルツスペクトルから物質固有のキャリア移動度を評価 〜高移動度有機半導体の探索に活用へ〜
(東京大学)
http://www.k.u-tokyo.ac.jp/inf...
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単色X線とナノ粒子により、がん患部でX線エネルギー効果を増幅する方法の開発に成功 −オージェ電子発見から100年、放射線がん治療の新境地を開く−
(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/re...
玉野井冬彦高等研究院物質–細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)特定教授、松本光太郎同特定助教、齋藤寛之量子科学技術研究開発機構上席研究員らの研究グループは、単一エネルギーをもつX線(単色X線)を、ガドリニウムを多孔性シリカナノ粒子により取り込ませたがんの塊に照射することで、その塊がばらばらになり消滅することを明らかにしました…

栄養飢餓耐性に寄与するがん代謝物(オンコメタボライト)の発見
(東京大学)
https://www.rcast.u-tokyo.ac.j...
固形がんでは、不完全な血管構築や血流不全から引き起こされる低酸素、低栄養、低pHなどの腫瘍微小環境が、エピゲノム変化、エネルギー代謝変動、転移・浸潤能などを促進し、がんの悪性化や治療抵抗性、再発・転移などの予後不良に寄与することが知られています…

分子生物学の基本原理「セントラルドグマ」の理論的導出に成功 - 情報と機能の分業を「対称性の自発的破れ」により解明 -
(東京大学)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focu...
ニュージーランド・オークランド大学上級講師および東京大学生物普遍性連携研究機構客員准教授の竹内信人、そして、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻および生物普遍性連携研究機構の金子邦彦教授は、媒機能を持ち複製する分子が集まった原始的細胞のモデルを考え、それが進化しながら複製していくシミュレーションを行なった…


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