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[読みたい論文] アレーンの特定の位置の炭素−水素結合を炭素−酸素結合に変換します。

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Posted: October 29, 2019
[有機化学] [ブログ]

Site-Selective C−H Oxygenation via Aryl Sulfonium Salts (Sang, Ruocheng; Korkis, Stamatis E.; Su, Wanqi; Ye, Fei; Engl, Pascal S.; Berger, Florian; Ritter, Tobias)
Angew Chem. Int. Ed. 2019, 58 (45), 15762−16166.

Keywords: TT; TFT; TFTO; TFAA; dfppy; dtbpy; C−H bond activation; Ritter, Tobias


硫黄原子を含む複素環式化合物、チアントレン-S-オキシドを介する、芳香環の炭素−酸素結合形成反応に関する論文のようです。金属触媒を使わない芳香族炭素−水素結合活性化によるスルホニウム塩の合成、特にその位置選択性がこの論文の売りの一つなのでしょう。

トリフルオロ酢酸無水物を使用しているあたり、上の反応スキームの前半の反応は良くある超原子価化合物の芳香族親電子置換反応のような気がします。Supporting Informationにある基質を見てみると、o, p-配向性を出しそうな置換基が芳香環にくっついたものが使われています。通常芳香族親電子置換反応では生成物はo, p-(又はo, m, p-)置換されたものの混合物になりますが、この論文の反応ではp-置換が選択的に起こっています。これ、やっぱり、超原子価硫黄化合物のデカさ故なんですかね。

スキームの後半はスルホニウム塩からの炭素−酸素結合形成反応であることはわかります。結合形成反応自体は目新しい気はしないのですが、反応のメカニズムが気になる(忘れた)ので、本文を読んで確認したいところです。書いてないかもですが。

チアントレン-S-オキシドにフッ素原子が結合していると反応にどう有利になるのかも知りたいので、読みたい論文に追加です。フッ素の代わりに重水素じゃだめなのか?とか。

この記事を書いた人

「牧岡ふうふ堂」オーナー。博士(工学)。
酒都圏在住。
某地方の国立系工業大学でアシスタントをしていました。 専門は有機反応・金属錯体(主に希土類)・π共役系。
twitterアカウントは@makiokafufudo(お仕事用)、@ymakioka(個人用)です。

 

 

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飛び立つスズメ。

 

計算終わりました

 

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[読みたい論文] 芳香環の芳香族性をぶっ壊してエーテル結合とアミン結合を作ります。
可視光照射下での[4+2]環化付加。
Angew Chem. Int. Ed. 2019, 58 (44), 15762−15766.

[読みたい論文] Pummerer反応を介してベンゾチオフェン骨格を形成します
メチル基はどこへ?
Angew Chem. Int. Ed. 2019, 58 (44), 15675−15679.

[読みたい論文] ランタン反応剤とハロゲン化ビフェニルでランタン−炭素結合を2つ作ります
クラシックなランタンの化学を新しい反応剤で。
Angew Chem. Int. Ed. 2019, 58 (44), 15631−15635.

[読みたい論文] アシルシランとピナコールボランの反応をカルベン経由で
「カルベン」をどうやって確認したんだろう。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (41), 16227−16231.

[読みたい論文] ケトンのα−炭素と芳香環とかをアルケンの両方の炭素にくっつけます。
ニッケルを使用していますが真の触媒が気になります。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (41), 16249−16254.

[読みたい論文] カルシウム触媒がベンゼン環のC−H結合を活性化します。
アルミニウム(I)とアレーンからの酸化的付加反応。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (43), 15496−15503.

[読みたい論文] Diels−Alderで芳香環の結合をぶった切ります
レトロもあるよ。
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141 (40), 15901−15909.

[読みたい論文] はじめてのネプツニウム錯体
配位子ブーン⊂二二二( ^ω^)二⊃
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14891−14895.

[読みたい論文] 位置も幾何異性も制御できるシリルエノールエーテル合成
頑張れば触媒的合成にできるか。
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14995−14999.

[読みたい論文] アリールトリフルオロメチルスルホンでSuzuki−Miyauraカップリング
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Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58 (42), 14959−14963.

 

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竹中工務店(社長:佐々木正人)と名古屋工業大学(学長:鵜飼裕之)は、高濃度のクロロエチレン類を無害なエチレンまで原位置浄化できる脱塩素化微生物(デハロコッコイデス属細菌)を分離・培養して、汚染土壌・地下水を効率的に浄化する技術を開発しました…

単一ナノ粒子計測を可能にするエクソソームアレイチップを世界で初めて開発 〜エクソソームの個性を調べる新たなプラットフォーム技術〜 : マテリアル工学専攻
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東京大学大学院工学系研究科の一木隆範教授らは、単一ナノ粒子計測を可能にするエクソソームアレイチップを世界で初めて開発しました…

薬剤耐性遺伝子を検出する新技術を開発! 2019 年 11 月に 製品化9種類の ESBL 遺伝子型の迅速検出技術を実用化
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クリーム製剤の安定性を制御する鍵、新しいαゲルの開発 〜低環境負荷な界面活性剤によるαゲルの作出と分子構造特性の解明〜
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連続的な社会実装を目指す共同研究に向け ピクシーダストテクノロジーズと協議開始 大学発先端技術による社会課題解決へ
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